野球をやっている多くの子が直面する肩、肘の痛み。
この記事をご覧になっている方も、きっとその痛みを抱えているでしょう。

今回は具体的にどこが悪いのか?どこを治せばいいのか?一例を参考にしながら解説させていただきます。

こちらの動画をご覧下さい。非常に綺麗な投球フォームなのに、何故肘の内側~肘の出っ張り部分が痛むのでしょうか?

とてもスムースに投げている様に見えますが、本人は塁間のキャッチボールでも痛くなるとの訴えがあります。昨今の中学生のレベルの高さが伺えますが、1年生ながら球速はすでに120㎞/h出す素晴らしい投手です。

お母様から撮影の許可を頂き、近くの公園にて投球確認しました。
動画解説と画像解説で、同じような痛みに悩んでいる子たちの参考になれば幸いです。
今までは漠然としたフォームへの理解も高まります。

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【何故、このフォーム(投球動作)で、野球肘になるのでしょうか?】 . . 素振りやバッティングで肘の内側に痛みが発生した中学生。 ピッチングフォームを撮影させてもらい、細かい原因を探ることにしました。 実際にフォームを確認してみると . . ①上半身と下半身が連動があまりない ②投げる直前の肘の角度が低い ③体重移動時の右股関節が上手く使えていない ④リリース時の前足の食い止めが甘い ⑤フォロースルー時の力が抜けていない . . まとめると . 「右股関節使い方が悪く、腕の筋力に頼って投げている」 . いわゆる「上体投げ」です。 これを改善するために . ・股関節のストレッチ ・肩甲骨から指にかけてのマッサージ ・フォームの改善点を理解 . を段階的に行っていくことにしました。 現段階では、股関節のストレッチをメインに、肩甲骨周辺をほぐし中。 . . #フォームチェック #投球フォーム #動画撮影 #和ごころ整骨院 #横浜 #金沢区 #釜利谷東 #スポーツ #怪我 #ケア #テーピング #筋肉 #金沢文庫 #金沢八景 #野球 #ピッチャー #check #taping

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フェーズごとに写真付きで詳しく解説

・どこがどうよくないのか
・どう改善したらいいのか
・どうしてそれがよくないのか

改善点を写真を使って詳しく解説していきます。

右投手の例ですので、左投手は反対の手足として理解してください。

体重移動を始める瞬間、後脚(右投手の場合右股関節)の角度が甘い

図1:体が一番低く沈んでいる時1

ボールを投げる前のこの動作では2つの重要なポイントがあります

右投手の場合、左膝を上げている状態から身体が一番低く沈む状態になるまでの動きの中で、右股関節は斜め下に向かって約45°という一定の角度で沈み続けることが良いとされています。

身体が最も深く沈み込み、右脚から左脚へ体重移動をする瞬間も地面と右股関節の角度は約「45°」が理想です。

・斜め下へ約「45°」で沈んでいく
・身体が最も沈んでいる時の右股関節と地面は約「45°」

この二つの「45°」がこの動作において1つ目の重要なポイントとなります。

ではなぜ、「45°」が理想なのか。

どちらかでも約「45°」よりも浅い角度で身体が最も沈み込むと、望ましい体重移動よりも早いタイミングとなってしまい、胸の張りが不十分になってしまうためなのです。
腕の力で投げようとする投手はおおむね、この体重移動がうまくいかずにエネルギーロスが生まれてしまい、それを補おうとして、上体投げになっている傾向が強いです。

もう一つは右足を曲げて身体を沈み込ませる際、「右脚は内へ捻る動作は行わない」こと。

これは身体が最も沈み込むまでに右脚を内側に向けたり、捻ったりすると体重移動距離を稼げず、その後の体重移動や腕の振りに必要な力の発揮を妨げてしまう可能性があります。
するとその必要な力を腕で補おうとしてしまい、上体投げへとつながってしまいます。

体重移動の瞬間はキャッチャーへ向けての反力が最大となるのです。この時、股関節の角度が「45°」かつ右脚を内側に捻らずに倒すと、地面を蹴り出す出力を最大化できるため上手くボールへ力を伝えられ、球速アップも見込めます。

彼の場合、オレンジの線で表している右股関節と地面の角度は約60°。緑の線が約45°なので角度が甘くなってしまっています。
右脚は内側に捻る動きが見当たらなかったので、角度を改善していきます。

身体が一番深く沈んでいる時の両手の位置が後ろに

図2:体が一番低く沈んでいる時2

体重移動の際には下半身とともに上半身の動きも大切になります。
せっかく下半身で大きな力を生み出しても、それを上手く上半身に伝えられなければ意味がないからです。

こちらは先ほどと同じく、体が一番低く沈んでいる時の写真となります。
上半身はこの時、テークバック直前の状態。この状態ではボール側の腕は、緑の位置にある事が理想です。これはちょうどポケットの位置にあたります。
ボール側の腕がポケットの位置にあると、そこからのテークバックをスムーズに行う事が出来ます。

対して、キャッチャーから見て手首が大きく見えるところまで腕を引いてしまうと、人間の肩や肩甲骨の正常な可動域を逸脱してしまうのです。
そこからテークバックを開始しようとしても、腕が上がりにくくなり適切なリリース姿勢をつくれず、体重移動を身体の回転に変える動きを大きく妨げることになってしまいます。

すると腕の力で補おうとしてしまい、必要以上の力を使ってしまいます。結果として上体投げになり、故障リスクの増加や投球耐性の低下を招く恐れがあります。

彼の場合、キャッチャーから大きく手首が見えているわけではないため、少しの修正で正しい位置に戻せるかもしれません。

リリース直前の前足の安定性に欠ける

リリース時、前足の最大の役割は体重移動の力を身体の回転と腕の振りに効率的に変換する事です。
それを実現させるため、重要になるポイントが2つあります。

・足が地面に接地する瞬間スネは地面に対して鋭角
・リリースする際、スネが地面向きに倒れること

足裏が地面に触れた瞬間から足裏に体重がかかるまで、ヒザは多少前に出ますが、それでもスネが地面に対し一定以上鋭角であることが1つ目のポイントです。

そこからリリースにかけて、スネは二塁方向に倒し寝かすことで、体重移動の力を余すことなくロックし、体の回転と腕振りに転換することが出来ます。これが2つ目のポイントです。

この2つのポイントができるようになると、前足がロックでき地面に突き刺した軸にできること、膝を前に出して力を吸収するロスを避けることができるようになります。
この使い方が身に付けば、腕の力を必要以上に使わずとも体重移動で得た力と地面からの反力で投球することが可能になります。むしろ球速アップや制球力向上にも繋がってくるかもしれません。

図3:リリース前(横から)

彼の場合足が地面に接地する瞬間からすでにスネが立ってしまっていて、リリースにかけてさらに潰れてしまっています。
この写真はリリース直前の瞬間を横から撮影したものです。オレンジの線が彼の地面とスネの角度を表していて、地面とほぼ垂直になっていることがお分かりになるでしょうか。
この瞬間緑の線の位置にスネがあれば理想的と言えるでしょう。

図4:リリース前(やや斜めから)

こちらはやや斜めから見た同じ瞬間の写真です。角度を変えてみても、体重移動の力が逃げてしまっている事がわかります。
スネと地面が鋭角になるには、膝の角度はもっと浅くなっていないといけません。

図5:リリース直前(やや斜めから)

次に膝の位置です。これがリリース時に外側にあると体重移動の力が逃げてしまい、ボールに自然に力を籠めることが出来ません。
これも上体投げに至る要因の一つです。

膝が緑の線の位置にあればしっかりロックができて、体重移動の力そのままに投球することが可能です。

身体に対してのアプローチ

フォームを完全に自分のものにする為には身体の治すべき部分を治し、強化していく必要があります。

彼の場合は、「右股関節の開き(外転・外旋)」、「右肩や右肘周辺の筋肉」を重点的にアプローチ中です。

右投げ投手の場合、右足は体重移動の軸となる重要な部位になり、上記の通りここの使い方が乱れてしまうと体重移動が上手くできず、「上体投げ」の原因となってしまいます。

柔軟性が獲得できフォームを改善できると、正しい体重移動により投球動作を行うことができる様になり、「上体投げ」になりません。
球速もアップします。

肩や腕の力に頼って投げている状態であるため、肩甲骨周辺は筋肉のハリや疲れが多く溜まっている状態。
これをそのまま放置して練習や試合に臨むと症状は悪化する一方です。

また、可動域を広げて腕のしなりを良くするという面でもこの部位をほぐしておくのは重要なポイントです。

自分のフォームのどこが良くないのか、改善点を理解してもらうことも大切。

理解してから改良に取り組んでもらうことで、「ここはこうだから直さなきゃいけない」と自分の中で納得できるうえに、効率が上がります。

まとめ

このようにして改善を図るのですが、どうしても根気のいる、時間がかかるのがこの治療。
モチベーションを上手く保ってあげるのも私たちの仕事です。気を落とさせぬようメンタル面のケアも行なっていき、完全復帰までサポートさせて頂きます。

再び彼が気持ち良く投げられる日が来るよう、私たちもさらに精進して参ります。