バスケットボール試合中に、パスカットしたボールに親指が引っ掛かり、親指の爪のつけねを骨折をされた子が来院されました。

激痛で試合を中断させてしまうほどでした。受傷直後から激痛を感じてプレーをすることが出来なかったそうです。

親指がツチノコの様に腫れあがる

アイシングを20分程度行っていたそうです。
しばらく時間が経つと指はパンパンに腫れ上がり、爪のつけ根に角度がついて、もう一つ関節が出来たのかと思うほど曲がっていました。

爪の正面側

傷めたのはお昼前後で、当院受診が21時ごろ。
親指の先の方がパンパンに張れあがって、爪の両脇とつけ根がめりこんでいるように見えます。

少し角度を変えて

安静にしていれば痛みは無かったのですが、触るだけでも激痛で、触診も満足にできませんでした。

爪の向きがおかしい

爪の向きがおかしく、極度の腫れ、触れるだけでも痛みが出ていました。
親指の骨折を疑い、レントゲン写真を撮ってもらうために整形外科へご紹介しました。

 

「右第1指末節骨骨折」の診断

夜間受診していただき、レントゲン写真を撮影してもらいました。

予想どおり、親指の爪のつけ根が骨折。下のレントゲンで、折れていなければ指先は右斜め上を向くはずです。指先の骨がちょうど真ん中あたりで折れているのがわかります。骨折してる部分が噛み合ってしまっています。

夜間外来にて

夜間外来の当直の医師が何度も徒手整復(骨折してズレた骨をもとの位置に戻すこと)を繰り返しても、骨の位置は元に戻すことができなかったそうです。別の病院の医師も整復できず、手術を勧められました。
何度も痛い所をつままれて、引っ張られて、とても痛かったと思います。よく頑張りました。

医師による折れ方の説明をしてもらい、メモに書いてもらいました。それが下の写真です。

骨が3個に砕けていました。ポキッと2つに折れたのであれば、引っ張って元に戻すことが出来そうですが、骨折して入ったひび割れは「Y」の字になっていました。ひび割れが斜めなので、いくら元に戻しても滑ってズレてしまいますよね。

 

手術しました

下記の理由があったので、監督の先生の知り合いの病院を受診し、手術となりました。

・チームの中心メンバー
・徒手整復は不可能だった
・利き手の為、長い期間の固定は避けたかった

「術式は『鋼線刺入術』」

局所麻酔でまず骨を整復し、そこに細いピンのような鋼線を骨に刺し、つなぎとめるというやり方です。
今回は3本の鋼線を用いての手術でした。

使用した鋼線は、基本的には数カ月で取り除きます。
固定材料の種類、手術部位、患者さんの年齢によって入れたままにしても大丈夫な場合もあります。

縫合した後、ギプス固定を2,3週間程してリハビリに移行します。

手術をしていない他の指は、固定中も積極的に動かし、固まらないようにしていきます。

手術後、状態が良ければ親指も早期からリハビリを開始し、機能不全が残らないように回復に努めます。

子どもの場合は、関節や靭帯などが柔らかい為、短期間で元の動きに戻ることができます。
大人の場合は長期間かかるうえ、完全に元の動きに戻らない場合もあります。

「後遺症が残る可能性も」

今回の手術は関節自体にかかっているので、

・変形
・拘縮(関節などが固まってしまうこと)
・短縮
・過成長(成長期の場合)
・シビレ

といった後遺症が残る可能性があります。

手術を選択すると、身体にメスを入れて、患部以外にも傷を作る事になってしまうのです。
術後の固定管理やリハビリをきちんと行えば日常生活や競技に影響がない程度に回復しますが、それらを怠ると上記のような障害が残り、時に日常生活に支障をきたすこともあります。

 

「まとめ」

今回の様に、

・極度の腫れ
・激しい痛み
・転位(折れた骨の動き)が大きい
・噛み合ってしまい、整復が難しい
・なるべく早い復帰を望んでいる

という場合では、手術の方が確実です。

 

追記~親指を骨折すると、爪が生え変わる

受傷後2か月目です。

爪が陥没した為、ワイヤーで爪を盛り上げたそうです。

新しい爪が生え変わると、紫色の部分が外に押し出されるそうです。

めちゃくちゃ痛そうですが、現在は元気にバスケをプレーしております!