肩関節脱臼後のトレーニング第一弾ダンベル第二弾メディシンボールはいかがでしたか?メディシンボールを行っている方はある程度は日常生活の不便もなくなり、あともう少しのところまで来ていると思います。

今回で仕上げ段階の第三弾チューブ運動についてお話しします。ストレッチで筋肉を伸ばすので、可動域(かどういき)を広げる目的もあります。これで完璧に脱臼を治していきましょう。

【広背筋・菱形筋リハ】

まず初めの位置です。手首を外回りに一周してセットします。

腕を頭の真上に挙げて下さい。
腕を挙げる時に痛みがある方は、無理をせずに上げれる範囲で大丈夫です。

リハビリ初期は肩から腕を固定をしていた為、関節が拘縮を起こし(肩関節自体が固まっている事)痛くて上げにくいですが、可動域を上げることに必要な事ですので、頑張って上げていきましょう。

※私の場合、腕を上げることができましたが、まだ三角筋前面に痛みがある状態でした。

次に、頭の真上まで上げたゴムを、後ろまで降ろしていきましょう。

胸を張り、頭が前のめりにならず、ゴムが後頭部に当たらない様にしていきます。ゴムは少し伸びているくらいまで引っ張りましょう。
腕を90°まで降ろし、そこから頭の真上まで上げていくことを1セットとします。
この動作を連続で10セット行います。

ポイントして、腕を降ろす時に息を吸い、上げる時に息を吐き続けるとより効果的です。

 

【僧帽筋リハ+前鋸筋ストレッチ】

上下運動が終わると、次は左右の前鋸筋をストレッチしていきます。
頭の真上まで腕を上げるのは同じですが、今度は左右に振りましょう。

このトレーニングは、背中を大きく覆っている僧帽筋(そうぼうきん)を鍛えることができ

ここでは脇の下の前鋸筋(ぜんきょきん)を伸ばしていくのですが、この筋肉は姿勢が悪かったり肩や背中に凝ってたりすると、すぐに影響を受けてしまう筋肉なので、肩をケガしてしまうと疲れが溜まりやすい所でも有ります。なので疲れをため込まない様にストレッチで伸ばしていきましょう。肩も挙がりやすくなりますよ。なで肩の人はここを鍛えていくと効果的ですよ。

 

③チューブ運動

次は後ろにセットし、前と同じく手首を一周してください。
後ろで上下運動をおこなって行ってください。

前でするよりも、後ろの方が肩にかかる負担が大きいトレーニングの為、痛い方は初め前だけでも大丈夫です。この二枚目の瞬間が「ズキッ」っという痛みがあります。

このトレーニングは肩甲骨周りの筋肉を動かし、肩の動きを良くしていきます。この動作は10回行なっていきます。今回今まで鍛えてきた肩回りの筋肉をスムーズに動かす練習なので、ゆっくりで構いません。私も初めは後ろでの上下運動が辛く、青いチューブが肩に近づくにつれ腕の三角筋(さんかくきん)あたりに鈍痛があり、少しの間は痛みが続いていました。写真では腕がちゃんと上がっていますが、この時も痛みがありました。この痛みがなかなか引かない時は焦りはありましたが、必ず痛みはなくなりますので焦らずトレーニングに励みましょう。

④チューブ運動

次は違う種類のチューブを使ってトレーニングを行っていきます。チューブを上の柱に引っかけ、写真の様にして準備して下さい。

脇を締めながらチューブを斜め45°に引きます。肘から先は動かさずに、肘を身体につけるイメージで大丈夫です。このチューブの角度や手の向きで鍛える筋肉が変わってきますので、今回は手のひらが上に向くように持ってください。このトレーニングで上腕二頭筋を鍛えることができるためさらに肩が安定してきますよ。この運動を10回行っていきます。ゆっくり行うと効果が上がりますよ。

チューブの角度はそのままで④のチューブ運動から右に向いて下さい。(右肩を脱臼した方は左を向いてください)手は横を向いていきます。

そのまま手を斜め45度に引いていきます。姿勢を意識し、肘から先を真っ直ぐに固定して下さい。

このトレーニングは三角筋を鍛えていますが、痛みが腕辺りにある人はオススメです。私も腕の痛みが最後まで残っていたので痛い筋肉をダイレクトに鍛えてるのが分かります。「痛いのに動かすの?」って思った方、大丈夫です。このくらいの負荷であれば、痛みはありますが逆にトレーニングをしないと、安静しているだけでは治りません。連続10回ゆっくり行いましょう。引くときもゆっくり引くのは大事ですが、どちらかと言えば戻す時の方がゆっくりを意識するとさらに効果が上がりますよ。

引っかけているチューブに背を向けてください。

そして手を前に出すように今度はチューブを押していきます。野球のピッチャーの動作をイメージすると、上手くいきますよ。このトレーニングも肩の前方を鍛えています。今回私は【肩関節前方脱臼】という肩関節脱臼の中で一番多い脱臼のケガでした。骨頭がいつもの位置から前に出てしまうことを言います。なので肩の前方を中心に鍛えています。

チューブ運動はいかがでしたか?トレーニングはもちろんですが、ストレッチの要素を加えて可動域を広げてどの方向に動かしても痛みなくスムーズに動かせるように出来るのが今回の目標でした。今回チューブ運動は斜め45°上に引っかけて行いましたが、角度が違うとアプローチする場所が変わってきますのでご注意をお願いします。ただ角度を変えてこっちの方がきつい時はその筋肉が弱っている証拠なのでその角度で続けてもらえたらと思います。

 

肩関節脱臼の禁忌肢位

禁忌肢位(きんきしい)とは動かしてはいけない動作または、動かすと再び脱臼してしまう可能性がある動作のことを言います。脱臼をした後、2週間は三角巾で肩を固定しているのですが、その時にあまりしない方が良い動作をご紹介します。

・腕を挙げる

この動作は肩動かす中で一番行う動作ですし、腕を全く上げない生活なんてなかなか難しいと思います。私も一人暮らしで、家事をしていると片手だけではかなり不便で苦労をしました。ただ、動かしてしまうとまた外れてしまう可能性があります。それに脱臼後2,3週間は痛くて動かせないと思うので、できるだけ三角巾で固定しておきましょう。

・腕を後ろに引く

この動作も外れてしまう可能性があります。こちらも痛くてできないとは思いますが、腕を後ろ引くと骨頭(こっとう)が前に滑っていきますので、関節窩(かんせつか)・周りの筋肉を傷めていると骨頭を支え切れずに前に飛び出してしまう恐れがあります。

・腕をひねる

ひねるだけではあまり外れないですが、上に書いた挙げたり・後ろに引いたりしながらひねると外れる可能性が高くなります。私も服を着替える時に腕を挙げながら袖に通す為に内側に捻った際に完全脱臼を起こしてしまいました。気を付けていても、いつもの何気ない動作で簡単に外れてしまいます。

禁忌肢位は基本的に痛みを強く感じる肢位なので出来ないとは思いますが、それ以上動かしてしまうと炎症がより広がってしまい、治りが遅くなるのでまずは動かさないことです。脱臼の激痛を経験するともう二度と同じ思いをしたくないですよね?禁忌肢位を知っておくだけでも日々の生活でどういう動きがダメなのかわかるので覚えておくと便利ですよ。

肩関節脱臼の整復方法

脱臼の整復法ですが、まず絶対に自分で行わないようにお願いします。どの方向に外れたか、筋肉・靭帯・関節の損傷具合などを医療機関で診てもらってから先生に整復をしてもらった方がバンカート損傷、ヒル・サックス損傷などの合併症を引き起こす可能性が減ります。

整復法は用途に合わせて様々ありますが、代表的例3つをご紹介します。

・拳上位整復法

仰向けになって斜め上に牽引を加える整復法です。

・ヒポクラテス法

こちらも仰向けになって、施術者が患者さんの脇に足を入れたら下方に牽引を加えて腕をひねる整復法です。

・スティムソン法

ご紹介する中では唯一のうつ伏せで行い重りを手首にかけて10分くらいそのままにしておくと自然に整復されていきます。

整復方法は牽引をかけながら腕をひねる事で骨頭を滑らせ正常な位置に戻す方法が多いのです。ただ症状によって整復方法は変わってきますし、患者さんによっては座った方が楽だったり、寝た方が楽だったりと様々なのでいろんな整復法があります。

その他にもヒポクラテス法・クーパー法・ドナヒュー法・モーテ法・ミルヒ法などまだたくさんありますが、ほとんどは肩関節前方脱臼の時に用いられます。それは前方脱臼が圧倒的に多いからです。なぜ前方に脱臼しやすいかというと、上の写真の大胸筋が大きく関係しています。こんなに大きな筋肉が腕に付いている為、よほど前からの衝撃が無い限り、前に引っ張られることが多くなるので、前方脱臼が多くなります。

まとめ

・チューブ運動で可動域を広げていく

・禁忌肢位を覚えておくと再脱臼するリスクが減る

・整復は絶対に自分でしないようにしてください

チューブ運動をしている人は、もうほとんど日常生活には問題なく動かせていると思います。チューブは長さを調整することで強さを変える事が出来る為、引っ張って少しきついなと思う所で行っていきましょう。完治を目指して頑張っていきましょう。禁忌肢位は初めの2週間が非常に大事です。この2週間の間にどれだけ安静して炎症が取れるかが今後のリハビリに繋がってきますので、治る日数が大きく変わってきます。

最後に今回が実際に経験したことを三部構成でご紹介しましたが、この記事を見て少しでも早く治ってもらえたらほんとに嬉しいです。脱臼は誰にでも起こる怪我です。私も脱臼するまではまさか自分がと思いましたが、今回をきっかけにこの経験談をもっと伝えていけたらなと思います。