この画像の患者様は二塁手(にるいしゅ)です。二塁手はピッチャーのサイドスローのような投げ方になります。

この時、ピッチャーであれば肘(ひじ)をあげるよう指導されますが、二塁手ではそういった事を指導された選手はあまりいないのではないでしょうか。しかし、これを続けていると二塁手でも肩や肘に負担がかかり、やがて野球肩(やきゅうかた)や野球肘(やきゅうひじ)を発症します。痛む場所は肩の前方が多いかと思います。

今回は重要視されにくい内野手の選手が、野球肩になった時のテーピングの貼り方をご紹介します。

内野手が野球肩になったら?テーピングの貼り方

準備するテープは5枚です。
ここでの黒いテープは2枚。2枚とも縦に3つ切り込みを入れて先を4枚にしてください。
ピンクのテープはそのまま3枚用意してください。

・三角筋(さんかくきん、肩の筋肉)の下の付着部から首筋×2、肩甲骨方向×2に
・肩峰(けんぽう、肩の骨の出っ張り)から全胸部×2、肩の前方×2に
・三角筋前後を大きく覆い、肩甲骨の内側の端まで

これで肩前方のつまりを改善でき、スムーズな投球が可能になります。

①患者さん(貼る相手)には立ってもらい、右腕を反対の肩に乗せます

②黒いテープ1本目は、三角筋を通って肩甲骨下角に停止するように

三角筋前後を挟むように
肩甲骨から鎖骨の少し下に向かう

④もう2本は僧帽筋、斜角筋を通り超えます

⑤次に大きく三角筋前方を覆います

⑥三角筋後部を覆います

⑦最後に、投球動作時にテープが巻き込まれない様に、上から押さえます。

投球動作を確認すると、痛み4割減。
投げやすくなったとのことです。

 

何故野球肩は多いのか?

昨年の夏の甲子園を沸かせた金足農業の「吉田輝星」投手。その裏で

「投げすぎだ」
「肩を壊すのではないか」

という声も挙がりました。
アメリカではMLB中心となり、2014年に「ピッチスマート」というガイドラインが作られました。
日本の高校生年代に当てはめると

「1日105球が上限で、76球以上投げた場合は中4日以上空けるべきだ」

これを読むと、いかに日本の子供達が怪我のリスクにさらされているかが良く解ります。欧米人より体格の劣る日本人ではより危険は高くなるんですね。

日本人は「一人で投げ抜く」などプロセスに美学と伝統があるそうです。確かに、並大抵では成しえない事ですし、努力や仲間との絆があってこその結果で合ったのでしょう。ただ、それで負担が増してしまってはその選手の未来を奪ってしまいかねません。

努力の方向を少し見直し、身体と気持ちを照らし合わせて最適な方向へ向うことがいいのではないでしょうか。

近年、野球肩や野球肘に関する正しい知識が普及

治療家・トレーナー・コーチ・インストラクターの間でも新しい知見を身につけるために、頻繁に学会や勉強会が行われています。
そこでは、古くからある日本の「気合」や「根性」という概念は見直され、いかに効率的に、いかに安全に選手が成長できるかが共有されていています。
怪我をした際の評価から治療、リハビリ、競技復帰までの過程も日々進歩しています。

メジャーリーガーのダルビッシュ投手や、横浜DeNAベイスターズの筒香選手もSNSなどで日本球界の刷新を訴えています。ダルビッシュ投手はメジャーリーグで活躍している中での発信であったので、日本とアメリカの「違い」が良く解りますね。いずれも現役のトップの選手が自ら発信したことで、その影響は大きかいです。

野球選手を取り巻く環境は日々変化し、良い方向に向かっています。この先、選手ファーストとなり野球肩などの酷使による障害が少なくなっていくはずです。

 

野球肩とは?

A,全力投球などで投げた瞬間痛みが出たなど、はっきりした原因があるもの
B,使い過ぎによって徐々に症状が進行していく

Aはいわゆる「外傷」と呼ばれるもので痛みも強いので休むことができ、しっかり治療をすることが出来ます。
問題なのがBで、見過ごされてしまったり、本人が無理をするケースが多いです。さらにこちらの方が圧倒的に多いです。それは

・はっきりとしたきっかけが分からない
・投げようと思えば投げられる
・投球をしなければ痛くない
・本人が休みたがらない(隠す)

そもそも野球肩とは、投球動作によって発症した肩関節障害の総称です。棘上筋腱炎、インピンジメント症候群、関節唇損傷など多くの障害の総称です。

・投球過多
・フォーム不良
・下肢柔軟性低下
・体幹の使い方ができていない
・肩甲骨や胸郭の可動域制限
・関節前方の緩みや筋肉や腱、靭帯などの軟部組織の硬さ

以上の項目が多ければ多い程、野球肩を発症しやすくなります。野球肩は原因から身体のSOSが見過ごされてしまい、Bが問題とされています。

 

治療は全身を診る

肩が痛いから肩だけを治療すると治療の成果が現れにくかったり、再発の可能性もあります。投球動作というのは肩だけで行っているものではなく身体全身で行っているからです。したがって、治療は全身を診ます。上記の項目を診るポイントとし、そこで修正点を洗い出すのです。

選手自身にも動画や画像など使って説明し理解してもらいます。これが重要で、自分で修正点を理解していれば治療はスムーズに進み、自分で身体のケアをする際も的確に行えるようになるのです。

・投球過多
・下半身の柔軟性
・体幹の使い方

この三つができていない事が多いので、まず投球を中止し、その間に下半身の柔軟性の獲得、体幹をしなやかに使う為のトレーニングなどを行います。
徐々に身体ができてきたら、肩のインナーマッスルも鍛えていきます。

テーピングはそれでも試合に出る時、リハビリを行う時に貼ります。この場合、テーピングは貼れば治るということではないので、あくまでも補助として考えて下さい。
貼り方はポジション、痛みの場所、フォームによって変わります。今回は内野手、特に二塁手の選手に貼りました。遊撃手や三塁手では痛む場所により、貼り方が変わる事もあります。

 

身体ができてきたらフォーム改善

ストレッチやトレーニングで獲得した柔軟性や体幹のしなやかさを、フォームに落とし込みます。

①今までのフォームを動画などで客観的に見直し、修正点を整理
②肩や下半身だけに注目せず、投球動作を一つのまとまった動きと捉える
③腕の角度、つま先の方向など隅々までチェック

効率的に重心移動ができていなかったり、身体全身を使えていなかったりと修正点が出てきます。
今までのフォームで体に負担をかけていた部分を見直し、獲得した下半身の柔軟性と体幹のしなやかさを使って、負担の少ないフォームの練習を繰り返します。自分でも確認することで修正部分がイメージしやすくなるのでオススメです。

短期間で改善できるものではありません。トレーニングやストレッチと並行しながらじっくりフォームを改善し、自分のものにしていくことが大切です。フォームの改善がうまくいき、全身を使って投げられる様になれば、自然と肩や肘にかかる負担は減り、球速アップや球のキレが向上します。

 

選手の痛みは監督やコーチの責任

「練習を休めない」
「練習を休むと試合に出られないかもしれない」

不安になる気持ちはよくわかります。ですが将来に無限の可能性を秘めた大切な身体です。

日本球界は「一人で投げ抜く」が当たり前でした。確かに、並大抵では成しえない事ですし、努力や仲間との絆があってこその結果です。ただ、それで肩の負担が増してしまっては、その選手を潰してしまいます。

チームの指導者が、選手の努力の方向を見直し、身体と気持ちを照らし合わせて最適な方向へ導き出すことが大切です。

 

まとめ

今回ご紹介した貼り方は内野手やサイドスローの投手など少々特殊な場合に使う貼り方です。複雑そうに見えますが、使うテープは5枚です。貼る方向、貼るときの肩や腕の位置を間違わなければ簡単に貼ることが出来ます。

もし、自分のチームに同じようなことで困っている選手がいたらお試しください。選手達と真剣に向き合い、最善の道を選択できるよう私たちも応援します。

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