患者様はスポーツマンで野球がお好きらしく、チームを掛け持ちで所属していて、更に仕事終わりにはジョギングまでしている程の運動好きです。野球をやっている最中にゴロを取ろうとした瞬間に転倒し、肩を地面にぶつけたとの事でした。

来られた姿は、素肌にジャージを羽織り、肩にはアイシングをされ、右手で左腕を支えている状態でとても痛そうです。

身体の向きを変えることが大変ですがベッドに仰向けで寝てもらい、ゆっくりと肩関節を動かし徒手検査をしてみた所

①骨の位置や脱臼特有の症状が現れていない

②ズレていることは視野に入れ、鎖骨の外側1/3の所の位置を触診

③その骨を優しくつまんで骨が「カクカク」音がしながら動く「軋轢音」を触れる

④鎖骨骨折も疑い病院でレントゲン撮影による画像診断を受けて頂く事に

後日画像診断の結果をもって来院されました。
結果は肩関節の脱臼はないものの、やはり鎖骨を骨折されていました。

レントゲンにはハッキリと折れているのが目視できます

※患者様が病院から頂いたデータの掲載許可を頂いています※

後日のレントゲンで、完璧に折れているのがクッキリと解りますね。

これはやや上側から撮った写真になります。

これが正面写真です。

裸になってもらうと、実は鎖骨がそんなにズレていないんですね。

「何となく腫れてるかなー」くらいです。但し、触ると軋轢音(あつれきおん)カキカキっと音を感じます。

 

負傷2日目には、首筋まで内出血が現れます

病院でレントゲン撮影後、綺麗に折れていた鎖骨を固定する『クラビクルバンド』です。
首筋が赤くなって、全体的には青くなっているのが解ります。触ると青い部分まで痛むそうで、首を動かそうものなら、鎖骨に響いて辛い様です。

首筋が青くなる理由は『鎖骨が造血幹細胞がある』からです。造血とは文字のごとく『血を作っています』赤血球を作る骨髄があり、ここが折れてしまうとブワーッと赤血球達があふれ出します。

 

鎖骨骨折を起こしたら、胸を張る状態を作るのが大切

鎖骨の形は独特で、やや捻じれ上がっている状態です。そのため、力を抜いた状態で立っていても正しい位置で骨癒合はおこりません。
胸を突っ張らせ、肩甲骨を狭める動きでないと正しく固定はされません。

両腕が後ろに寄せている感じです。

鎖骨全体を後ろに反らせるのがポイントです。

後ろを締めるのは「ややキツメ」が適当です。

ご自身で着けるには、慣れるまで4日程要しますが、しっかりと締めましょう。

 

鎖骨と肩関節は夫婦関係

肩関節を構成している骨は3つあり

  • 上腕骨(腕の骨)
  • 肩甲骨(背中側の平らな骨)
  • 鎖骨(前側の首元にある細長い骨

でつくられています。

それぞれの骨は次のようにつながっています。

  • 鎖骨は胸骨で胸鎖関節を作ります。
  • 鎖骨と肩甲骨で肩鎖関節を構成。
  • 肩甲骨と上腕骨が肩甲上腕関節(狭義の肩関節)を作っています。

肩関節は外れやすい?

脱臼は、狭義の肩関節である「肩甲上腕関節」で双方の骨同士が接触している面積が非常に小さいため、外れやすい構造になっています。

構造的に弱い理由は、脳を守る為

鎖骨の首に近い方は円筒形で、肩に近い方に行くにつれて薄く平らになっていくことから、外側が骨折しやすくなっています。

今回の様に直接肩を地面にぶつけると

  • 肩関節の脱臼
  • 肩鎖関節の脱臼
  • 上腕骨骨折
  • 鎖骨骨折
  • 肩甲骨の骨折も考えなくてはなりません。

これだけケガのリスクがあります。
また脱臼と骨折が同時に起こる「脱臼骨折」や多発骨折なども疑う必要があります。特に高齢者のにおいては上腕骨骨折が起こりやすいので特に注意が必要です。

強い衝撃を受けた際に、脳にその衝撃が伝わらないように肩の関節を外したり、鎖骨を折って衝撃を逃がしたりして身体を動かす司令塔である脳を守ろうとしているのです。

 

鎖骨骨折をしたら手術の方が早く治る?

鎖骨骨折の治し方としては

1、保存療法

2、観血療法

骨折した骨同士のズレ方が小さく軽度で、ある程度クラビクル(鎖骨)バンドで胸を張った状態で固定して骨同士をくっつける方法です。

ただしこの方法はバンド固定をしたまま日常生活をおくって貰いますので、多少なりとも身体の動きが伴う以上、きちんと骨同士がきれいに着き難い為、「変形治癒」と言ってある程度骨がずれた状態で治ってしまいます。

観血療法(かんけつりょうほう)とは

簡単に言いますと手術です。
特に保存療法に適さない方が主な対象になります。

その主な例としては、

  • 特にスポーツ選手などで、早期に現場復帰しなければならない方。
  • 認知症などで、固定困難な方。
  • 周辺に複数の骨折や脱臼が確認された場合。
  • 骨折した断端が皮膚を突き破り外に出た、或いは出た可能性がある(複雑骨折)

ただし手術になりますと、一番気を付けなければならないのは「感染症」になります。
体内は無菌状態を保つために常に免疫が働いています。しかし飛沫または接触によってウイルスや菌が常に体内に入ってきます。免疫が勝っているうちは風邪など引いたりしませんが、体が弱っていますと免疫が負けてしまします。こうなると風邪や肺炎などにかかってしまうのです。
その最悪なケースが「敗血症」といい。免疫の要である血液が負けてしまい機能しなくなり、死に至ります。

折れている箇所に、固定としてチタン製のネジやワイヤー・ビスなど固定します。

手術は数時間体内を開いて外界にさらしますので、手術室がどんなに無菌状態に近くてもリスクは少なからず存在します。特に体力のない高齢者の方はその辺も踏まえて決断します。

体質によって手術をしない場合も

今回のケースでは、この患者様は若くてスポーツを行うので、出来るだけ元の状態に戻したかったのですが、以前に治療していた際に途中風邪を引いた後、咳が続いて居たので肺炎の心配があり医師の対診をお勧めしたところ、その懸念が当たってしまい入院となりました。

肺炎はかなりしつこい疾患の為、まだ薬を飲んでいた為か或いは、折れた骨の転移が小さい為か保存療法が適用になりました。

 

そんな痛く無いから平気?!見落としがちなポイント

今回のケースの様に大きく痛みが出た場合や肩が動かないなど、日常生活に支障が及ぶ場合はともかく、「単純にぶつけただけだし大したことないや」と思わず、関節周辺での打ち身は剥離骨折を招く事もあります。

また「腕はまあまあ動くから平気」と放置すると、肩鎖関節亜脱臼(けんさかんせつあだっきゅう)になっている可能性もあります。

肩関節におけるケガはいずれも「肩が動かない」や「腕が挙げられない」と言った症状が共通点です。

その為にどのような原因で起こったかで「骨折」・「打撲」あるいは「関節周囲の炎症」なのか別れます。その為に原因は非常に重要になります。また、原因が「転倒」して肩が上がらなくなったとしても、それ以前に何か原因があるかもしれませんので、慌てずによく考えてみてください。

 

肩が上がらない!骨折したかも?!いざという時の緊急処置方法

本来は三角巾(さんかくきん)を使って腕を釣りますが、身近な物で代用が効きます。

(腕や手首の骨折をした際にも有効です)

① 上着のポケットやズボンのポケットに手を入れる。

② シャツのボタンを真ん中だけ外しそこに腕を知れて吊る。

③ ショルダーバッグのひもを短くしタスキにかけて腕を吊る。

④ 大きめのスカーフやショール、マフラー等を三角巾代わりにする。

⑤ 45ℓのポリ袋でもできます。

⑥     靴紐・ベルト、最悪はヒモでも可能です。

コツとしては、なるべく肩関節が腕の重さで下がらないように出来ると負担が減ります。

この様にしてお近くの医療機関へ受診してください。

 

鎖骨骨折のまとめ

転倒したり、固い物に肩からぶつかると、腕を動かせない場合があります。打撲かなーと思っていたら、実は鎖骨の骨折・脱臼だったりもします。

余りにも動けない程痛い=骨折
少し動かせるけど、なんか引っかかる=脱臼

可能性があります。お一人で悩まずに、直ぐに近くの医療機関へ受診して下さい。

また鎖骨骨折と診断され、固定をする際には

①胸を張る
②キツク締める
③肩甲骨を寄せるなど正しい姿勢

異常を心掛けて下さい。おおよそ1カ月~1カ月半で治ります。