スポーツは常に怪我がつきまといますが、ラグビー・バスケ・ラグビー等人と人がぶつかり合うコンタクトスポーツに多いのが肩関節脱臼です。

この間もバスケの練習中に肩を脱臼した患者さんがいらっしゃいました。何故脱臼してしまうのか?その原因と症状、治療法についてお話していきます。

肩関節は、肩甲骨・の関節窩(かんせつか)と上腕骨の上腕骨頭(じょうわんこっとう)とで関節を構成しています。肩の脱臼は、上腕骨頭が関節窩から 、その一部もしくは全部が外れた状態をいいます。

肩の脱臼は、非常に頻度の高い脱臼のひとつで、習慣性になりやすい脱臼です。また、先天的要因や後天的要因で亜脱臼(あだっきゅう=不完全な脱臼、 外れかかっているような状態)を頻繁に起こす症例も多く見られます。

肩関節脱臼とはどんなもの?

肩関節は、小さなお皿のゆな肩甲骨の関節窩(かんせつか)の上に大きなボール(上腕骨頭)が乗っているような格好をしてます。この隙間がある為、簡単に脱臼しやすいんですね。


脱臼すると

若い人では関節包(関節を包む袋)が肩甲骨側から剥がれたり、破れる
高齢者では関節を包む筋肉が、上腕骨頭に付いている部位(ここは腱板と呼ばれる)で切れたり

脱臼に伴い、肩・腕・手に行く神経が傷つき、加齢とともに損なわれる率が高くなります。また、上腕骨頭の外側や前方にある骨の突起(結節という)の骨折をしばしば伴います。

上腕骨頭のずれる方向によって

前方脱臼
後方脱臼
下方脱臼
(垂直脱臼ともいう)

に分けられ、前方脱臼が全体の95%以上を占め、後方脱臼と下方脱臼はまれです。

なお、関節が完全に外れてしまう脱臼以外にも、一度外れても簡単にもどる亜脱臼や数分間腕全体が痺れたようになるデッドアーム症候(数分間程度痛みで腕が全く動かない)がありますが、本質的には脱臼と同じ損傷です。

 

原因は?

関節窩から上腕骨頭がズレる方向によって前方脱臼、後方脱臼、下方脱臼に分けられます。

【前方脱臼】

転んだ際に体を支えようとした腕が、横後ろの方向や上に無理に動かされた時に起こります。
スポーツ中に転んで肩の外側を強く打った時、腕を横後ろに持っていかれた時などにも生じます。バスケットで言えば、リバウンドを相手と競り合ってバランスを崩し、腕から落ちてしまうケースが結構あります。

【後方脱臼】

転んだ際に、体の前方に腕を突っ張った時や、肩の前方を強く打つと生じます。
腕立てをするような体制で強く腕に衝撃が来た時に外れやすいです。

【下方脱臼】

腕を横方向から上に無理に動かされると生じます。

原因としては、一番は転ぶ時ですね。転ぶ恐怖からか腕を先について転ぶ方が多いです。逆にそうしないと大怪我に繋がる事が多いのですが。スポーツ時では相手との強い接触。ラグビーやアイスホッケー等当たりの激しいスポーツはよく脱臼するでしょうね。

 

どのような症状が現れるのか?

外れた直後に結構な痛みがくる

脱臼の方向によって腕は特徴的な位置に固定され動かなくなる

・前方脱臼では肘が体の前・横方向に離れる

・後方脱臼では肘は体についたままですが、腕全体は内側にひねられています

・下方脱臼では腕を横に挙げた状態で、下には下がりません

 

亜脱臼では、初めは腕が固定されますが、体を動かした時に肩がぐりっと動いて急に痛みが楽になり(自然に脱臼がもどる)肩が動くようになります。

デッドアーム症候では、数分間痛みで腕が動かないのですが、その後は徐々に動くようになります。いずれの場合も肩を動かした時の痛みが数日〜1週間程度続きます。

 

 

痛みが強い時はすぐさま整形外科か整骨院へ

肩の脱臼は痛みと腕が動かなくなるので、すぐ外れたことはご自身で認識できるかと思います。強い痛みと身動きができない場合はすぐに診断を受けましょう。

整骨院の先生、整形外科の先生は触ることで外れているか外れていないか分かります。神経が損なわれているかどうかの検査も行います。

亜脱臼の場合でも一回は外れているので診察を受けましょう。その時の状況と日取りを覚えといて、詳しく話してみて下さいね。

検査は、異なった2方向からのX線撮影です。必要に応じて他のX線撮影やCTを追加することもあります。亜脱臼やデッドアーム症候では、MRIを行うこともあります。

外れたら整形で写真を撮って、治療は整骨院でもいいと思います。1発では治りません。何度か通院してもらって時間をかけて治していきます。分からないことがありましたらご相談下さい!

 

 

治療法は?

脱臼をもどす方法色々ありますが、ゆっくり時間をかけて治していきます。 ベッドの上に腹ばいになった患者さんの手首に重りを付けて引っ張る方法や、ベッドに仰向けになった患者さんの腕を引っ張りながら徐々に上に挙げていく方法(ゼロポジション拳上法)が代表的です。

下方脱臼だけは整復方法が異なり、腕を最大に挙げた位置で上に引っ張ります。 万歳のような形から上に少しずつ力を加えて施術者が引っ張っていきます。

一部の患者さんはこれらの方法では整復できず、全身麻酔や手術が必要になることもあります。整復後は再びX線撮影し、伴っている骨折部分が大きくずれたままであれば手術を行います。

その他の場合は、腕を三角巾などで3週間以上固定しますが、固定する腕の位置は脱臼の方向によって異なります。

 

①内旋位固定

②外旋位固定

 

と二つに分かれます。
その後、徐々に肩の動きを回復させますが、脱臼を起こさせる方向の運動は6〜8週間禁止されます。とにかく脱臼した方の腕は何もしない様に!

早めに腕を整復したい!という方は早急に治療を受けましょう。

 

 

脱臼した!と思ったらまず応急処置を

肩に激しい痛み違和感がある時はまず、どうしたのか疑いましょう。そのまま放置はいけません。(放置できるような軽い痛さではないですが)楽しいスポーツをしているときに、自分やチームのメンバーが肩関節脱臼を起こしてしまったら慌ててしまいますよね。応急処置の方法を覚えて備えましょう。応急処置の方法をいくつかご紹介いたします。自分一人ではちょっと厳しいので仲間にも協力してもらう必要があります。

傷む方の肩を腕にかけて固定する

肩関節脱臼が疑われるときは、腕が動かしにくくなります。問題ない方の手で、痛みがある方の腕を支えておきましょう。支えておくことで、腕が必要以上の動きをしなくなるため安定感が増し痛みも最小限に抑えることができます。

道具がある場合には、さらしや腹帯、胸帯などで体に固定をしてしまうことも一つの手段といえます。

バンテージで巻く方法を載せてみました。バンテージが無かったら包帯でも大丈夫です。

ぶらぶら腕を垂らして処置する方法

高いベンチにうつぶせで寝ます。このベンチは自分の腕が地面につかない程度の高さがあるとよいです。そのまま、痛みがある方の手をだらんと下におろします。あれば3~5㎏のおもりを手首に巻き付けても良いです。10分前後で治ることがあります。

かなり脱力してだらーっと垂らしてくださいね。その後は痛みが引いても整形外科・整骨院のの受診しましょう。

処置をしてみて全然駄目であれば、すぐに受診です。写真を撮ってもらいましょう。1回脱臼して治ってまた脱臼して治ってと繰り返し脱臼している方(反復性肩関節脱臼)は手術しなければならないと思うので、医師と相談してくださいね。

 

 

再発を予防するための努力をしよう!

どの怪我に対しても、再発を予防するために、トレーニング・ストレッチ・筋トレ等様々な努力が必要です。日常生活にも十分注意しましょう。

 

反復性の場合、根本的な所を手術する

脱臼を元通り治せば生活を送ることは出来ます。ですが肩関節は脱臼しやすい部分です。何度も脱臼をする場合は、はがれてしまった腱などをつなぎなおす手術をして根本的な治療をします。手術をしてもすぐに動かせるわけではなく、数週間固定をして肩の安静をはかります。また手術後も腕を後ろにつくような動作はしないように注意しましょう。

 

肩関節のリハビリ

方周囲・腕の筋肉をつけておくといいでしょう。結果的にいえば筋トレをすること。肩関節を支える筋肉を作りましょう。これは、先生の指示に従いながら気を付けて行ってみて下さいね。

最初はペットボトルを使って軽めにやってみましょう。

脱臼が治った時、脱臼を繰り返さない様に、本格的にダンベル等使って方周囲の筋肉を鍛えます。ちょっと重さのあるものを持ちながらゆっくり行ってみて下さい。

脱臼はふとした瞬間におこりうるものです。それでも応急処置をしてしっかり受診すれば問題ありません。痺れ・激しすぎる痛み・ちょっとおかしいと感じたら骨折の場合も考えられますので、すぐに受診してください。

どっちにしても違和感を感じて治ったとしても受診することをお勧め致します。

肩関節脱臼について分からないことや、疑問に思ったことがあればお気軽にメッセ―ジ・お電話ご相談下さい。