大学アメリカンフットボール選手がご来院されました。守りの選手なので身体は大変大きく、がっしりとした体格です。

初めはスネが痛い程度だったのですが、何度も相手選手と接触していると、スネの外側が余計に痛くなってしまったとのことでした。疲れやストレスでかなり弱っている状態に、タックルを何度も受けることによって疲労骨折に成ってしまったケースです。

動画は来院された2週間目の動画です。
足を着いて歩くところまで回復してありますね。

「疲労骨折」と「骨折」は何が違うの?

スポーツ中、ぶつかり合うと強い衝撃が加わり、折れてしまうことを『骨折』と言います。骨というのはそもそも頑丈で、なかなか折れたりしないものです。

疲労骨折とは?

強い力が加わって折れるのとは違い、弱い衝撃が繰り返し加わることで、金属が捻じれて折れるように、骨自体が痛んでくることを指します。

何もない時のランニングは、負担がかからない状態になっているのですが、疲労や姿勢などから歩き方がおかしくなってくると、次第に足や身体への負担になってしまいます。こうした負担は体重を支えているところ、特に足や足の指の骨に掛かってきますので一緒に支えている足の筋肉が疲労で支え切れなくなると、骨が折れてしまいます。

画像参照:札幌スポーツクリニック

膝から下の足の骨は2本あります。

a. 脛骨(けいこつ)
身体を支えている中心の太い骨で、上は太ももの骨、下は足首の骨を介して踵へとつながります。

b. 腓骨(ひこつ)
脛骨で支え切れない部分を分散し補助してくれるその外側の細い骨。

腓骨だけが折れることは割と珍しい

スポーツ選手でもぶつかり合うと、自分の持つ力以上の衝撃が加われば折れてしまいますが、屈強な筋肉に囲まれている選手はこのような場合なかなか折れたりしません。

疲労骨折の場合でも、体重の掛かるスネの骨が先に折れることが多く、脛骨は全体の27%に対し腓骨は9%です。
腓骨に達する以前に、足や指や筋肉などが先に症状が出ますので他の骨と合わせて起こることが多いです。

今回の場合は、相手選手との接触で折れてしまったとはいえ、既に腓骨に疲労が限界近くまで溜まっていたところなので、疲労骨折になります。

腓骨で折れやすいのは上下それぞれ1/3

参考資料:おさぎ鍼灸整骨院様

下側1/3の部分では、マラソンなどの繰り返し行われる動きで、骨の内側にたわみが生じて折れやすくなります。
上側1/3の部分はジャンプで着地した時の衝撃が上側1/3の所で外側にたわんでしまい、繰り返されるとそこが折れてしまいます。

一般の方でもトレッキングやハイキングなど、慣れない道を長時間歩き続けますと起こることもあります。
またブーツや革靴など固い靴を履いて歩きますと、決まった所に衝撃がかかり折れてしまう事があります。

今回のケースは下1/3で起きた腓骨の『単純骨折』練習での疲労が重なったうえで相手と接触して折れてしまいました。

疲労骨折の固定と治療法

画面中央の足首の少し上にキズのような跡が骨折している所です。
足の甲や包帯の巻いた跡から、浮腫みが発生せいてます。
写真では見難いと思いますが、画面中央の外くるぶしの少し上に「赤くポチッ」となっているところが骨折したところになります。

※今回の場所は筋肉よりも腱などのスジが多いので、折れた骨が皮膚を突き破って出て来てしまう『複雑骨折』も有りますので注意が必要です。

幸い皮膚から折れた骨が飛び出したり、折れた所が大きくズレなかったことが幸いして、手術をしない【保存療法】に。
病院でシーネという副子で足をおおって包帯で固定され、松葉杖での生活になります。

※以前来院された患者様は、身体を支える方の骨「脛骨骨折」を起こし、髄内釘手術(ずいないてい)と言って、骨の芯に金属(チタン製)の棒を入れて固定する方法になりました。腓骨の場合は「骨折線が綺麗に真横に入った為」手術をしないケースです。

こちらではアイシングを行いながら、電気治療でむくみや周囲の組織が固くならない様に弱い電気を流していきます。
電気をかけながら冷やすことで、腫れが引きやすく、痛みも緩和しやすいんです。

その後折れた患部に、超音波治療器【LIPUS】ライプスを当てて骨が早く着くように治療していきます。

超音波を微弱に長時間かけると、骨癒合細胞が活性化され、骨折した箇所の癒合が早まる効果があります。
当院では、骨折した患者様にはこのライプス治療と電気治療のコンビネーション治療というもので、骨癒合促進を図っております。

超音波と電気治療を同時にかけることで、更に骨癒合細胞を活性化させます。
また、骨折箇所の老廃物除去の機能もある為、浮腫みも引きやすくなります。

腓骨骨折は概ね1カ月以内に回復する

1、11月の上旬は、むくみ(浮腫み)や皮膚組織が固くなってました。

2、毎日の様に通院してきたかいがあって、11月中旬にはチームドクターよりGOサインが出ました。

3、松葉杖からロフトスティック(片側杖)に変わり、半分荷重をかけた歩き方に変わました。

4、その後経過が良かったので23日ごろには杖なしで歩くこと。

5、26日にはジョグスタート。

6、29日には走ることが出来たので、試合形式の練習参加。チームドクターのOK済み

7、12月上旬、公式戦に間に合う事ができました。

足の骨折に気を付ける『コンパートメント症候群』

足は骨と筋膜(筋肉をおおっている膜)と、骨間膜と言って2本の骨の間をおおっている膜があります。
それが仕切りとなって部屋の様な空間があります。
これを『筋区画』や『コンパートメント』と言い、その空間の中に筋肉や血管または神経が通っています。

参考資料:さいとう接骨院様

骨折や外側から大きな衝撃を受けた場合、筋肉が腫れたり内出血によって、この空間の圧力が上がります。
血管や神経が圧迫され、血液循環が悪くなり、神経麻痺が起きてしまいます。これを「コンパートメント症候群」と言います。
この症状は「痛み」はもちろん

①蒼白(皮膚が青白くなる)
②足の脈が消失
③感覚が痺れたり、麻痺がおこる

異常の症状を出ると、大変危険ですので救急病院へ行きます。
これにならない為に、固定の圧迫具合等十分に配慮しております。

疲労骨折でお悩みの方へ

普段は何ともないのに、部活終わった後が痛くなる。走ってる途中で痛くなる。。ジンジンして痛いような気がする・・・

最初は「足(スネや甲)がちょっと痛いなー」

程度でも、実は疲労骨折を起こしているケースがあります。
レントゲンでも解り難い場合もありますが、進行すると白いモヤの様に写ったりします。
思うように治らず、1カ月以上痛む様であれば要注意です。

試合に間に合わせたい、早く治したいなどあれば、お気軽にご相談下さい。