中学2年生で、すでに130㎞/h近く投げる彼は、成長期につれ段々と肘の後側が突っ張ってきたそうです。

投げやすく、肘が伸びやすくなる様なテーピングを貼りました。

詳しい貼り方

①上腕三頭筋の長頭に沿って一枚
②三角筋の外側縁に沿って一枚
③前腕伸筋、回外筋群を挟むように1枚
④前腕中央部から肘をまたぎ挟むように一枚
⑤円回内筋に沿って前腕のテープの端を止める様に一枚

テーピングを貼る時の注意

テーピングを貼る時は、必ず狙った筋肉が引っ張られた状態を作って、皮膚も少し引っ張りながら貼ります。
こうすることでより効果が高く、剥がれにくくなり、かぶれにくくなります。

このテーピングをした翌日の試合で、ピッチャーとして7回まで投げ切り、バッターとしては4打数2安打1本塁打という結果も残せました。

後方型は比較的稀

野球肘には三種類あり、それぞれ

・内側型
・外側型
・後方型

と分類されています。

後方型の特徴

「後方型」は

・肘の後ろの出っ張り(肘頭:ちゅうとう)がそこに付着する上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)によっって過度に引っ張られる
・肘を完全に伸ばしきる事で骨同士がぶつかる

このような力がはたらき、

・疲労骨折
・通常、中~高校生で閉じる成長軟骨の閉鎖不全
・骨同士がぶつかり続けて骨がトゲの様になり、それが欠けてしまう(骨棘:こつきょく骨折)
・肘後方の軟部組織が詰まってぶつかる(後方インピンジメント)

などといった症状が出てきます。

今回のケースでの痛みが出るタイミングは

・約40%以上の力での投球時(フォロースルー時)
・スイング時
・安静時の肘を完全に伸ばし切った時

との事でした。

大部分は保存療法で

後方型は骨へ直接障害が起こることが多いです。骨折や成長軟骨の離開が認められる場合は手術が選択されることもあります。

ただし多くは保存療法が選択され、その場合、投球禁止と投球ホームの矯正、コンディショニングを重視した柔軟などのリハビリテーションが主な治療方法となります。
受傷前のレベルでの復帰までには少なくとも二か月はかかると考えて下さい。

治療期間が長期にわたる為、投げる感覚やスイングの感覚が狂ってしまうことも。
それを防ぐ為にリハビリや復帰初期、症状のコントロールをする際に、当院ではテーピングを積極的に取り入れています。

今回は「後方型」に対して行うテーピングをご紹介しました。

テーピングのメリット

なぜテーピングを貼るのか?そのメリットは以下の点があげられます。

・症状が強く出ている時は痛みを抑えることができる
・治療の後半、練習参加時にに貼ることで、患部への負担を減らしながら練習ができる
・筋肉の走行に沿って貼る為、目的の動きのサポートが得られる
・血管拡張作用によって、腫れや疲労物質を軽減できる為、投球後の張りを軽減できる

かぶれなどが無ければテーピングを貼ることで大きなメリットが受けられます。

まとめ

今回のケースでは、初診より約一カ月は

・超音波
・関連する筋肉のマッサージ
・投球動作時に必要な関節のストレッチ

を続けて、素振りでの痛みが消えた状態になってからテーピングを貼り、徐々に練習や試合に復帰という形をとりました。
途中、試合などで致し方ない場合を除き、8割以上力での投球も禁止とし、徹底的な管理のうえでもう大丈夫と判断してから、テーピングを貼っての出場を許可しました。

・痛みが少し引いたから
・今日は調子が良いから

などで最初からテーピングを貼っての出場や練習はオススメできません。
患部の治癒は進んでいませんし、悪化の恐れもあります。

正しく使えばとても効果の期待できるテーピング。
クラブやチームへの出張講習会やトレーナー帯同も随時承っております。
より多くのチームの方のお力になれればと思っておりますので、ご興味のある方はお問い合わせください。