「バスケの試合中、相手の膝がふくらはぎに入った!」
バスケをしていると必ずと言っていいほどこの場面には遭遇します。
・大抵1日や2日で痛みがとれるのにもう1週間も続いてる…
・何回も同じところを打撲してるけど大丈夫なの?
・肉離れも癖になるの?
といった疑問を持ったことはありませんか?実はこういった外傷で腫れや痛みがひどいものを放置すると重篤な疾患になるケースがあります。一般に肉離れは
・安静時に痛みが無い
・局所的な押された痛み
・伸ばした時の痛み
・数十分後に皮下出血班が出てくる
・押したときに筋肉が陥没している場所がある(中等度以上)
といった症状が現れます。
重度の肉離れになると、自分で歩くのは困難になり、スポーツに復帰するには6ヶ月以上かかります。軽度であっても早期に診断を受け、治療を開始しなければ、クセとなり再発を繰り返します。
放置する事なく、適切な治療とリハビリを受けましょう
まずはその場で「RICE処置」
参考文献:譲治の勉強日記
スポーツの現場で打撲などの外傷に遭遇したらまず「RICE処置」を行います。この「RICE」とは
・Rest(安静)
損傷部位の腫れや血管・神経損傷を防ぐ目的で、患部を安静に保ちます。筋肉や関節の動きを抑えることによって内出血も抑えられます。
・Ice(冷却)
細胞壊死と腫れを抑えるため、患部を氷で冷却します。15~20分冷却すると患部の感覚が鈍くなるので外して、また痛みが出てきたら冷却することを24~72時間繰り返します。シップや冷えピタなどは深部の冷却効果はなく、キズや水泡がある場合は皮膚を覆ってしまうことにより感染源となるので適しません。
・Compression(圧迫)
患部の内出血や腫れを抑えるため、腫れている部位を中心に腫れのない部分まで軽い圧迫を加えます。強い圧迫は循環障害をきたすので注意が必要です。
・Elevation(挙上)
腫れの軽減と早期消退を図るため、患部を挙上します。患部を心臓より高い位置に挙上することが理想です。内出血や腫脹は筋肉の多い部位では吸収されやすくなります。手足の末梢に広がると吸収は遅れるので、患部をできるだけ高い位置に置くことが大切です。
アイシングの際、可能な限り患部を伸ばします。こうすることで腫れが大きくなりにくく、症状が早く良くなります。
肉離れにはテーピング
網目状に貼り、テンションをかけることで循環をよくする効果があり腫れを早く引かせてくれます。
ふくらはぎの中央部に痛みが場合は、ヒラメ筋から腓腹筋にかけて貼ります。
反対のヒラメ筋も同様に。
足底からアキレス腱へ
腓腹筋全体を包み込むように貼ります。
剥がれないように、ピンク色のアンカーの役割もあります。
これで翌日には3~4割程痛みが取れます。
肉離れよりも注意するべき症状
【コンパートメント症候群】とは、骨や筋膜(きんまく)などに囲まれた区画(くかく)の中にある複数の筋肉が、骨折や打撲などの外傷(がいしょう)、繰り返し加わる外力などのが原因で損傷(そんしょう)されて炎症(えんしょう)がおこり、その炎症の逃げ道がなくパンパンに腫(は)れて、その区画の中の圧力が上昇してしまうものです。
参考文献:とよだクリニック
圧力が上昇してしまうと中にある筋、血管、神経などが圧迫されると、血液(けつえき)や神経伝達(しんけいでんたつ)が阻害(そがい)されます。これを循環不全(じゅんかんふぜん)と言い、壊死(えし)や神経麻痺(しんけいまひ)を起こすことがあります。
特に多くの筋肉が存在する
・ふくらはぎ
・太もも
・前腕
での発生が多いです。
特にふくらはぎは外傷、繰り返しの外力など危険にさらされることが多いです。ただの打撲だから…とか、きつい練習が続いているのにケアをせずに放置するのは危険が伴います。
翌日になって少しでも症状が悪化していたら迷わず医療機関を受診しましょう。
打撲や骨折だけじゃない。使い過ぎで発症するケースも
打撲や骨折で腫れ上がって発症するというのは理解しやすいと思います。しかしそういった外傷だけでなく、繰り返し行うランニングやジャンプなどの激しい運動でも起こる事があるのです。
バスケやダンスなど、硬い場所で行うスポーツでは着地やダッシュなどの衝撃がもろに足まで伝わってきます。
結果、すねの骨の内側についている「後脛骨筋」(こうけいこつきん)がその衝撃を吸収しきれず、ダメージが蓄積され炎症を起こします。【シンスプリント】の延長です。この炎症により、過度に腫れてしまうと【コンパートメント症候群】に至ります。
慢性的に症状が現れることもある
運動後ふくらはぎが痛む、痛みがとれても張りが残るという方は【慢性コンパートメント症候群】かもしれません。
長距離ランナーに多く、長時間使い続けていると運動後数十分間ふくらはぎに痛みが出てきます。この痛みは数分で治まりますが、筋肉の張りが残ります。
筋肉の連続した使用により伸び縮みが繰り返され、肥大や浮腫みにより区画内圧が上昇します。そのため、運動後に痛みが出てきてしまうのです。
【慢性コンパートメント症候群】でも症状は変わりません。痛みの他にシビレが出る事もあります。ただ症状の程度は軽く、比較的早くおさまります。この痛みが数時間以上続くのであれば「疲労骨折」の疑いがありますので検査が必要です。
見分けるコツ「6P」
【コンパートメント症候群】で最も怖いのは壊死を起こし、切断に至ることです。早急に判断をして処置を施さなければなりません。
自分で「少し怪しいかな?」「いつもの打撲と違う」と感じた時には以下の6つを確認してみて下さい。
・蒼白(患部が異常に青白い:pallor)
・疼痛(ケガの程度に見合わない激しい痛み:pain)
・拍動消失or触知不可(心臓から見て患部より先の拍動が確認できない:pulselessness)
・知覚異常(左右比べて触られている感覚が鈍いor感覚がない:paresthesia)
・麻痺(患部が痺れている、動かせない:paralysis)
・腫脹(腫れ:Pressure)
この6つは循環障害と神経障害を意味する症状です。英語で表すと全て頭文字が「P」なので『6P徴候』と呼ばれています。打撲や練習がきつい時、この症状が1つでも当てはまれば直ちに医療機関を受診して下さい。
拍動を触れる場所は以下の場所で確認
①前腕が痛い→手首の内側の脈で確認(橈骨動脈)
参考文献:ナースフル
②大腿が痛い→膝の裏の脈で確認(膝窩動脈)
参考文献:大塚製薬
③ふくらはぎが痛い→足首の脈で確認(足背動脈)
参考文献:看護転職サイトランキング
病院での検査は内圧を測定する
上記の「6P徴候」でいずれかに当てはまり医療機関を受診すると、確定診断を得る為に内圧を測定します。診断方法は以下の通りです。
・市販の血圧計を患部に巻き内圧を測定、30mmHg以上、または拡張期血圧との差が30mmHg以内で陽性
・「needle manometer法」:実際に針をコンパートメント内に差し込み、内圧を測定、30mmHg以上で陽性
・「Passive stretch test」(パッシヴストレッチテスト):腫れの強い部位のを伸ばされると痛みが現れる
これで診断が確定となります。
陽性が出た場合は直ちに処置を行う
陽性が出て、緊急を要する場合、直ちに「筋膜切開」を行います。
「筋膜切開」とは筋膜を直接切開し、そのコンパートメント内に溜まっていた圧力を下げる方法です。
筋肉や神経は完全に血流が遮断されてから約4時間を経過すると壊死が始まり、約8時間で完全に壊死状態に陥り、回復が見込めなくなります。
そのため、上記の測定で陽性が出たら積極的に「筋膜切開」を行い、循環障害を回避します。
まとめ
痛みがなくなれば競技に復帰しても大丈夫です。
ただ、患部の筋肉が硬くなっているのでウォームアップ、クールダウンは入念に行う必要があります。
日常的に起こる外傷でも重篤なケースになる事もあります。受傷した際は自己判断はなるべく控えて、医療機関を受診しましょう。
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