ある日突然肩が上がらない・・・
夜中に肩の関節に激痛が走り、起きてしまった・・・
服の袖を通せない・・・
この症状がでたら、だいたい四十肩五十肩(しじゅうかたごじゅうかた)と思います。特徴としては中年男女に多いことからの呼び方になってますが、後ろに手が回らないことが共通です。
肩関節の構造
肩関節は肩甲骨と腕の骨と鎖骨で出来ています。
肩の関節は、骨の他にも筋肉や靭帯や腱、軟骨、関節円盤(かんせつえんばん)といった、柔らかい組織(軟部組織)で作られています。この組織が老化していくことで、炎症が起こり痛みや動かないといった症状が起こります。
五十肩になってしまう原因とは?
必ずしも「これをやるとなるよ」という直接的な原因はまだわかっておりません。
「運動不足」
「猫背の姿勢」
からなっていく事が多いです。
主な発症年齢は、その名の通り五十歳代を中心とした世代です。
①運動不足で筋力が落ちて老化
②猫背でスムーズに腕が上がらないまま使い続けること
③糖尿病を患っている方はなりやすい
と言われています。
ただし痛みが出たと言って五十肩と結論を出す前に
『どこがどのように痛いのか』
を良く把握しておく必要があります。
痛みだす(発症)時期によって、治る日数が変わる
肩関節を守っている関節包(かんせつほう)という包みが、小さくなって痛みや動きを制限させてしまいます。これが進行すると凍結肩と呼ばれる状態になるのです。
①急性期・・・痛み出して2週間以内のこと
この時期は、夜間痛(やかんつう)といった痛みで、眠れないこともあります。全く動かさないでいますと、拘縮(こうしゅく)と言って肩周りの筋肉が固まってしまい、関節が動かなくなってしまいます。
肩関節の動く範囲を確かめて、肩甲骨を意識的に動かしておくと拘縮を防ぐことが出来ます。
概ね1カ月程度の治療が必要です。
②亜急性期~慢性期・・・急性期を過ぎ半年ほど肩が挙がらない状態
安静時痛(普通に生活している時の状態)は減少しますが、動く範囲が狭いですね。
この時期に治療院に来られる方が1番多いかもしれません。
「最初痛かったんだけど、いつの間にか痛みが無いんだよね。けど何だか肩を上げるのがおおっくうになったわ」といった訴えが聞こえます。
概ね2~3ヶ月程度の治療が必要です。
③固定期・完全拘縮期・・・1年以上肩が挙がらない・固まってる状態
日常生活で肩関節の動き自体に制限がかかることを言います。
安静時痛は無くなりますが、動かすことができにくい状態です。腕を横に広げると90~120°しか挙げれず、それ以上は固まって動かせない場合が多いですね。
概ね3~6ヶ月の治療を要し、更にご自宅でのリハビリが必須となります。
ご自宅でのリハビリをせずにいると、一向に良くならず、1年以上かかることもあります。
四十肩五十肩には、治療院の電気治療がオススメ
肩関節周囲の筋肉を電気刺激で個別に動かし、血行を良くし、狭小化した関節包を緩める目的もあります。
肩関節をおおっている三角筋の前後と胸筋、背中の筋肉に端子を取り付けて電気の力で血行を良くいていきます。また筋肉が弱っている状態でしたら少し筋肉が動くくらいまでボリュームを調整します。
ASPIAを使った治療
当院にあるASPIAはSSP(電気鍼)やHV(ハイボルテージ)を組み合わせた治療が出来ます。
例えばSSPを肩関節のインナーマッスルに効かせながら、HVで三角筋(関節包)を動かしたり、胸筋や肩甲骨を動かす筋肉に着けて、SSPで関節包を動かしたりも可能です。難しい表現になってしまいますが、四十肩五十肩に特化した電気療法があるんだなと、思って頂ければ幸いです。
マイクロカレントクロスという電気をかけると、腰の後ろに動かせなかった腕が、段々と肩甲骨側に近づく程変化が出てきます。
干渉波では、肩関節周りの大きな筋肉をEMS機能を使います。大きく動かして筋力を上げていく設定なども有効です。
超音波治療器を使った治療
電気治療器と同時に超音波治療器を併用して治療していくことも可能です。まだ安静時痛のある急性期~亜急性期では、関節包に電気治療器を装着し、痛みのある所に超音波を照射して炎症を取っていきます。
干渉波などの電気治療器で三角筋が動く所まで電圧を上げ、胸筋や背筋、腕の筋肉、肩の筋肉に超音波を照射して緩和させるのも良いでしょう。
手技療法
拘縮予防に手技療法を用いて、筋肉の緊張を緩和しておく事も改善に繋がります。施術では主に電気治療がより広範囲に浸透するようにします。
特に腕の上げ下ろしの時に痛みがでたり、片方の手で痛い腕を上げられない時は、肩甲骨周りをほぐしてあげるのが大切です。肩関節周囲の筋肉だけでなく、肩甲骨の内側や、首肩の筋肉にもストレスがかかっていますので、胸筋・三角筋とともにほぐしていき、肩甲骨を浮かしたり、剥がしたりもします。
疲れた筋肉の疲労回復するための施術も大事です。
特に肩甲骨周りの筋肉を固くしない様に
A,肩甲骨をストレッチ
B,腕をけん引したりして緩める
拘縮予防のストレッチ・ヨガ
ヨガさえやれば、全て治るんではないかと思うほど、有効です!
ここでは簡単な分類に割愛しますが、できれば本格的に上半身全てを伸ばしてあげると、どんどん肩が挙がるように・動くようになります。見様見真似で良いので、是非ヨガをやってみましょう!!
腕を後ろに伸ばしてストレッチ
①両腕を広げ手のひらを前に広げます。
②腕ごと捻るように手のひらを後ろに返します。
③そのまま腕ごと背中へ寄せます。
④3秒ホールドしたら静かに戻します。
筋力向上の運動
①両肘を90度に曲げ手のひらを上に向けます。
木製のハンガーや棒などを持って外側へ引っ張ったり、内側へ押し合ったりを何回か行います。
②痛い側の肘を90度に曲げてます。
③タオル・またはチューブトレーニング用のバンドで、内側や外側へ引き合います。
少しずつ筋力が上がっていきます。
セルフケア
①壁に対して横向きに立ち腕を上げて壁に手を付きます。
②そこから少しずつ、指を壁に這わしてあげて行きましょう。
③タオルの端をそれぞれ持ちます。
④上下に背中を洗う動作をして、少しずつ肩関節の動きを広げていきます。
病院での注射や、薬の服用について
整形外科ではブロック注射やヒアルロン酸注射、手術などで痛みを治療する方法があります。
痛みが強い時は、痛み止めを服用しましょう。
冷感湿布・温感湿布どちらも効果はありますので、ジンジン・ズキズキする際には、積極的に使いましょう。※長時間使用の、皮膚のかぶれには十分お気を付けください。
ただし、いくら病院で注射や薬を服用しても
「その部分の使い過ぎ」→仕事やスポーツで酷使し過ぎている
「筋力低下」→肩周りの筋肉が弱すぎる
生活改善・予防をしていかないと、再発(繰り返してしまう)可能性があることをご理解下さい。
その他、似た症状に注意
肩回りだけ運動(リハビリ)すれば治ると思ってませんか?
右肩だけのリハビリを偏ることで、体のバランスが崩れてきて、肩の運動が負担になってしまう事にも注意が必要です。
肩に痛みを感じる場合は、筋肉や関節以外にも原因があるかもしれません。
心筋梗塞や肺がん、胃腸障害といった内臓の病気のほか、ストレスやホルモンバランスでも起こります。また糖尿病を発症されている方は五十肩になるリスクが高まるそうです。一度こういった所も診断を受けておくことも必要かもしれません。
レントゲンを撮ってみたら、トゲ・石灰と言われた?
肩が上がらなくなった時は、まず五十肩を思い浮かべますよね?でもそれ本当に五十肩でしょうか?
ある日突然肩が動かななくなり夜中に痛みで起きてしまったり、あるいは寝られなくなってしまう事も。これは五十肩特有と思われがちですが、石灰が肩の関節にたまると五十肩と同じ様な症状が現れます。これは石灰沈着性腱板炎と言って、五十肩と同じように治療してもなかなか治らないので、画像診断を受けてみたら石灰沈着だったという事があります。
石灰沈着(せっかいちんちゃく)ってなに?
参考文献:千葉大学医学部附属病院 整形外科外来
体内に残ったカルシウムが関節の中にたまってしまい、やがてトゲとなって他の組織を傷つけて炎症が起きてしまいます。
人は食べた物を消化吸収して体に取り込んで活動しています。カルシウムも同じで、体は骨に必要なカルシウム量(血中カルシウム100㎖中10㎖)を維持するために、腸からの吸収と尿からの排泄で調整しています。尿から排泄しきれなかったカルシウムは、血管内のほか関節内の腱や靭帯に蓄積したり、腎臓や尿路などに残ったりします。
40~50歳代の女性に多く、運動不足による血の巡りの悪さが根本的な原因となります。血管の内に残ったカルシウムはコレステロールの酸化とともに動脈硬化の原因になります。腎臓や尿路では結石の原因になります。また同じ姿勢でいることが多いと腰や首にも負担が掛かかり、カルシウムが沈着しやすくなります。
変形性膝関節症などで骨棘(こつきょく)といったトゲが出来るのもこれが原因の一つです。こまめな体操や姿勢を変えるなどなどで筋肉を柔らかくして血行を良くしておくことが大切です。
整形外科学会では3期に分けて
1、急性期の場合は1~4週ほどで強い症状が出ます。
2、亜急性型は中程度の症状で1~6ヶ月続きます。
3、慢性型の場合は運動時痛が6か月以上続きます。
急性期は関節の内で石灰がまだ柔らかいため注射器で吸引し、三角巾などで肩の安静を保ちながら消炎鎮痛剤やステロイド注射などで治療する保存療法がおこなわれます。
亜急性や慢性型では石灰が固くなるので、肩を動かした際に周囲と接触して炎症が沈まなくなってしまう事も有ります。このような場合は手術も視野に入れて治療する事になります。
四十肩五十肩と似たような症状
肩の関節の周辺の組織が炎症を起こし
① 五十肩(凍結肩)
② 肩峰下滑液包炎
③ 腱板断裂
④ 上腕二頭筋長頭腱損傷
この四つの疾患はどれも似たような症状ですが、痛い場所やどこまで動かすと痛みが出るかなどで変わります。画像診断と合わせて見極めることが大切です。
石灰沈着はレントゲン撮影で確認できますが、より詳しく確認するにはCT検査や超音波検査などで行います。腱板が切れている疑いがあればMRIなどを用いて検査します。
予防ストレッチ
関節の痛みを予防するには筋肉を鍛えるのが一番で、特に全身運動にもなる水泳などは効果が高いです。しかし様々な理由から実現するには難しいですね。そこで日常で肩の筋肉を強くしていく方法として固い木製のハンガーや棒を使って簡単にできる体操があります。やり方は簡単です。
①気をつけの姿勢で、手の平を上に向けた状態で肘を90°曲げます。
②そのまま肩幅でハンガーや棒を持ちます。
③互いに外に向けて力を入れて引っ張りましょう(1分間)
④今度は内側に押し合うように力を入れましょう(1分間)
この二つの動作を交互に数回行って頂くと、肩関節周囲の筋肉が少しずつよみがえってきます。また両手を上げて伸びをするとか、胸を広げることもマメに行うことも予防に繋がります。ぜひお試しください。