山手の坂道でヒールを履いたまま転倒し、最初は「折れてるのでは?」と思うほど紫色に変色されてました30代女性の捻挫です。
ペディキュアが赤いのも相まって痛々しい限りでしたが、足を着けない・体重も掛けれずケンケン歩きに。
ですがご本人は「オートマだから運転ならできる」と、当院のホームページをcheckして遥々遠方からご来院されました。
1、ヒールを履いたまま捻挫をすると、足の甲の靭帯まで同時に切れる
捻挫とは、足首があらぬ方向へ自分の体重で押し潰されると同時に、足首の周りにある靭帯が切れることを言います。バスケットやバトミントン等急激なターンをするスポーツ選手に特に多く、当院スタッフの渡辺君の記事でも紹介しました。
今回は一般女性ですが、靭帯損傷度合いも非常に高く、色の変化もさることながら圧痛点(押されて痛む箇所)が広範囲だったんです。パッと見「これは外果も同時に折れて内出血が下まで降りてきたのか?」と思うほどです。
普通の捻挫は上図の様に【内返し】となり足首の外側の靭帯が伸びきるor切れてしまいます。
勢いが激しかったり、体重のかかる割合が多いと足首の上の脛腓靭帯も切れてしまいます。
スポーツ中では更に重度なことも起こり得ます。相手の体重が乗っかったり、トップスピードから転倒したり・・・この場合は靭帯の付け根からバキッと骨が剥がれてしまう=骨折を伴うこともあります。捻挫損傷にもレベル分けがあります。
レベルⅠ
→足首の外側の靭帯を伸びてしまうor少し切れてしまう
レベルⅡ
→外側の靭帯+上下の靭帯+内くるぶし側の靭帯も痛めてしまう
レベルⅢ
→靭帯は切れる+靭帯根本から剥がれるor亀裂が入る骨折
裸足や普通の靴、ランニングシューズの場合が上記です。
今回は高いピンヒールを履かれたことにより、損傷具合が『んっ?』と思う不思議な点がありました。まず膨れている(腫脹部)が外くるぶし(外果)下ではなく指先に集中している。
来院1日目ですが、踵の付近まで紫色ですね。
これは普通な捻挫とします。ですがそんなに腫れてはいません。
レベルⅠ~Ⅱ度の場合でも、前・中・後距腓靭帯部が損傷することがほとんどなので結構腫れるはず+押されても痛むはずです。
ですがやや腫れてる程度で、気になるのは指先につれてクリームパンみたくなってる点です。
人差し指・中指がどす黒い・・・
しかも内出血班(紫色)が足裏まで出現してる・・・
高いヒールを履いたままの捻挫は特殊
常に足首を下に向いている状態(底屈)から滑る様に足がズレて、バランスを崩した状態から靭帯を伸ばします。
参考画像:The Berry
ちょっと言葉で伝えるのが難しいんですが、普通の捻挫する瞬間を地面接地ゼロ(0)スタートからグニャ(5)→ブチっ(10)とします。
ヒールの場合は地面接地が(2)くらいなので、足首が滑り落ちズルっ(7)→一瞬でブチ手前(9)に行きますが、女性特有の関節が柔らかい&ヒールの高さで少し浮いた状態になる為最終段階の(10)に到達しないんですね。
更に痛める靭帯も、距腓靭帯のやや前側の靭帯と筋肉(長・短趾伸筋群)を伸ばしてることが確認できました。
足首の周りは、支帯という薄い膜(本当は頑丈)で腱を覆っています。この支帯の上に靭帯が乗っかりますが、ヒールの場合はこの薄い層を傷つけることとなります。
2、捻挫治療はアイシングとマジックサポーター以上の固定が必須です
当院での捻挫治療は、その方の私生活に適した治し方を心掛けています。病院では細長いバンテージを渡されただけみたいですが、これでは足首がグラつく為靭帯がくっつかず、早期回復は難しいです。早く治すためには
①アイシング
②固定
③足を高くする時間を1日30分以上作る(高挙)
④痛めた足を地面に着けようとせず安静に
が絶対条件になってきます。
【RICEの法則】ですが、整骨院ではこれに+αとして電気治療や超音波治療等様々な治療器があります。更に鍼灸治療も同時に行うと治療速度は単純に2倍早まります。
アイシング
受傷当時~3日間は20分氷水でガッツリ冷やして下さい。
冷え過ぎてビリビリと皮膚が痛くなってきますが、我慢です。理想としてはバケツに氷を10個入れ、足首がスッポリと入る程度まで水を入れ、そのまま足を突っ込んで下さい。これが最も効率的に冷やす方法です。
院では保冷剤でキツク締め付けた状態で電気治療を流し、超音波治療を行います。アスピア複合機のコンビネーションだと更に腫れが引きます。この後に固定となります。
※最近の理論ではアイシングをしない方が良いとありますが、それはある条件が必要になります。
捻挫の場合、末端毛細血管に組織液も交じり、血小板・白血球が活発になります。足を衝くと痛みが広がるのは神経を血液等で圧迫されるからです。ここにアイシングをし、活発に動く奴らを抑制し動きを鈍らせた方が腫れが引きやすいのです。1000人以上の捻挫を診て様々な治療を施しましたが、基本に忠実なのが治りが早いんですね。
オルテックスというフワフワのクッションを下地に入れます。ギプス固定の下地なんかにも使う物です。
これによりサポーターで圧迫しすぎても、圧力を分散し血流の逃げ道が出来る為腫れが引きやすくなります。
次に包帯固定ですが、ここはシンプルに8字【エイト字包帯】と言います。
患者さんご自身にもお風呂上り等に巻きなおしてもらう為、取り易くて巻き直し易いものにします。
弾性包帯なので、コツさえ掴めば誰でも簡単に巻き直すことができます。
※巻く際の注意点としましては、足首をなるべく90°に保ったまま巻きましょう。足首がブランブランな状態ですと包帯と皮膚に隙間ができ靭帯癒合が長引く場合があります。
概ねここまでの固定ならレベルⅠの対応が可能です。
ここからレベルⅡ固定
サポーターは横にステー(固定する金属orスプリント)が入った物を選びます。
私はMüller社のサポーターが一番好きです。
バスケット選手仕様となってますが、一般の方にも非常に重宝しております。
コンパクトですが、固定力・締め付け具合・頑丈な強度が素晴らしい。。。
長期間装着すると素材が伸びきったり、マジックテープ部分が弱くなったりと若干はするものの、2カ月は余裕で乗り切れます。
サポーターの締め付け具合ですが、思ったよりもグイっと引っ張りながら巻きましょう。
但し締め付けが強すぎる場合、土踏まずが痛くなったり、アキレス腱が擦れたりする為、弱すぎず超強すぎず・・・やや強めくらいを意識して下さい。
サポーターの最後の過程ですが、二本クロスする締める箇所があります。
外側の方を強く内側に引っ張るとなおGood。
内返しの反対方向で矯正しますので、外返しになる様にしましょう。
これで患者さんに一旦足を地面に接地してもらいます。痛みが減り歩けそうなら歩いてもらいます。この際にどこかがきつ過ぎないか?邪魔になってないか?他の箇所が痛くなってないか?を確認します。
確認しますと、サポーターに慣れていないのもあり、体重が変な方向に掛かってしまい、足裏が痛いということでした。これを改善する為、オルテックスを加工し足底クッションを作ります。
足底からくる衝撃ベクトルが、捻挫の場合はやや内側にズレてしまいます。
そうなると腰痛や太ももの痛みを引き起こす原因ともなりますので、足底のバランス調整は大事にしています。
3、捻挫をした後はどうやって歩くの?早く治すために必要な事
『捻挫をした時は家でどうしてれば良いの?』
『部活は続けて良いの?試合には間に合うの?』
『お風呂とかはどうするの?』
『早く治すには何をすれば良いの?』
重度の場合、松葉杖やロフストランドクラッチ等を使用し足を浮かせる【衝撃ゼロ】状態を作ります。
骨折や靭帯完全断裂にはギプス固定で全く足を動かさない&靭帯創再生するまでじっとしなければなりません。
松葉杖を以前使われたことがある人は解りますが、松葉杖の経験が無い人は慣れるまで2~3日間ほど時間がかかります。上手に歩かないと転倒してしまったり、杖に持っていかれて手首や肘を痛めたりと・・・良くお聞きすることをまとめてみますと
①病院で出された松葉杖の高さが合わずに上手く歩けない
②杖をわきで締めることで、わき(腋窩)~肩の付け根や胸(大協筋)が痛くなる
③手首も掌も痛む・マメができる
④患側をかばって、反対の足が痛くなってきた
⑤階段や段差で転びそうにor転倒してしまった
⑥白線やマンホール、ビルのフロア等で特に雨の日滑って危なかった
松葉杖でのデメリットが沢山ありますね。
そんな時に【矢谷淳】さんの動画を参考にして下さい。この方の説明は非常に解りやすく、かつ疲れないで楽に歩けます。初めての方向けや、階段の登り方を丁寧に説明してくれます。
松葉杖とは、正しい使い方をすれば非常に心強いパートナーです。体のどこかが痛くなったり、体力を消耗してしまうのであれば
❶自分の背丈・腕の長さに合った杖の高さ調節
❷痛む足を浮かせるor痛まない様な「ベストポジション」を見つける
❸脇や肘、手首が痛まない体重移動・慣性の法則を身体で覚える
※昨今では従来の松葉杖をのデメリットを全て取っ払い革新的機能を備えた【スマートクラッチ ジーニアス】というものがあります。リハビリの最高峰・エンドポイントとも言われ主にヨーロッパから流行しています。怪我をした方の徹底的な運動学観察からくるミリ単位の設計には脱帽します。お値段も最高峰ですが、どの松葉杖も合わない場合はご参考までに。
将来の松葉杖は、この機能が標準装備されていたりするんでしょうね。足の怪我の他に、麻痺がある方やご病気の方にも非常に有効で、今まで外に出にくかった人が外に出れるようになります。