若いお母さんで出産後手首が痛くなることが良くありますが、このような「使い過ぎ」による手首の痛め方もありますので解説します。

〇やせ型50代女性

〇3年前に50肩を発症し

〇整形外科で月1回のペースでヒアルロン酸を注射

〇上腕部にも痛みが出ている

〇昨年10月に手首の腱鞘炎と診断

〇今年1月にステロイドを注射

〇今年3月よりテニスを始め手首外側(尺側)に痛みが生じるように

〇専業主婦をされていますので、家事などで毎日肩や腕は酷使しています。

徒手検査では

◎肩関節は特に可動域は良好

◎頭の後ろに手を回す(結髪)動作で三角筋後部と結節間溝部に痛みが出現

◎首と肩の間に重い痛みが出ており、頭痛も

◎手首はフィンケルスタインテスト陽性

◎手関節外側(尺側)に痛みあり

◎手首を下に傾ける(尺屈)+手首を回す(回旋時)に同様に痛みが出ている

以上からTFCC損傷を疑いました。

TFCC損傷とは...

三角線維軟骨複合体(さんかくせんいなんこつふくごうたい)とよばれ、手首は前腕の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)、手のひらの手根骨(しゅこんこつ)があります。手首の関節は

橈骨・手根骨の舟状骨・月状骨の3つで構成されております

これでは安定性に乏しいので、手関節の尺側(小指側)の三角形の領域に、尺骨三角骨靱帯、尺骨月状骨靱帯、掌側橈尺靱帯、背側橈尺靱帯、関節円板、尺側側副靱帯、三角靱帯という7つの靱帯があり、これらが複合体となって手首の外側の安定を保っています。

テニスやゴルフといった手首のねじり動作が多いスポーツで起こるのがTFCC(三角繊維軟骨複合体)損傷と言われます。これらの靱帯によって安定を保たれている軟骨、つまり三角繊維軟骨複合体という組織が損傷されると、痛みが生じます。

  • ドアノブを回したり
  • タオルを絞る動作
  • 車のキーを回したり

するときに痛みが現れますが、尺骨茎状突起(手首外側・小指側の突起部分)あたりに生じるピンポイントの痛みが特徴です。スポーツの種目でいえば、テニスや野球のキャッチャーなどにも多い損傷で、TFCC損傷はケガによる場合と加齢にともなう場合に大別されます。

今回のケースでもテニスを始めており、雑巾を絞ると痛みがですとおっしゃっていました。

既に腱鞘炎と診断されていたときに手首のサポーターをされていたのでそのまま使って頂くことに。

整骨院での手首治療方法

当院での手首リハビリ方法はこちらをご参考下さい→錦織選手を悩ませた手首の腱鞘炎【症状~治療~サポーター~リハビリ】まとめてみました

始めに電療を10分

右肩・肩甲骨内側・三角筋後面・前腕伸筋群に

施術

頚肩部が硬結していましたので軽く押す程度

肩甲骨が動きやすくなるように

TFCC部に超音波

超音波設定は 3MHz 1.0W DUTY50%

治療開始2日目

翌日は腕が重くなったとの事⇒前腕部とTFCCにも3分ずつ超音波

その後手首は痛むところがはっきりしてきた⇒頚肩の所に痛むわけではないが響く

その夜頚肩が非常に重くなる⇒翌朝には痛みが取れてスッキリ

治療開始3日目

整形外科で肩関節にヒアルロン酸、手関節にステロイド注射

肩関節前面が重い⇒鎖骨下と頚肩部に超音波治療⇒肩関節前面は軽くなる

治療開始7日目

電療と手技療法を合わせて治療してきました。治療直後は大分軽くなるようですが、夜になると頚肩が重くなり、翌朝にはまた軽くなるとの事です。

治療開始12日目

腋窩(QRS)部と前腕骨間伸筋群にも施術追加

途中寝具を取り換えてみた所、頚がかなり楽になったとの事

治療開始14日目

手首のステロイド注射から2週間経過してTFCC部にあまり変化が見られなかったため、前腕伸筋群とTFCC部に超音波を切り替えて治療を行いました。

手首の痛みに変化が無い場合に『手首サポーター』のススメ

1週間後当初より手首の痛みは軽くなってはいるものの、日常生活である一定の動きに対して痛みが出現するとの事で、以前から使用しているサポーターでは心もとないので「リストケアPRO」を使用してもらう事にしました。

このリストケアPROは、一見分厚くゴツイ印象ですがゴムギャザー部を手の甲側(背側)にして手首を通しベルトで適度に締め付けます。手のひら側(掌側)にアルミプレートの入った部分が手のひらの手根骨まで覆われるので、可動域制限がかかり安静が保たれやすくなります。またこのアルミプレートは取り外しが可能ですので、患部の状態に合わせて曲げ加工が出来ますし、プレート外して丸洗いOKです。

さらに付属品を使用すると親指の付け根から手首にかけて痛くなるド・ケルバン病の固定や手根管症候群にも効果を発揮させられるマルチ対応のサポーターです。

リストケアPRO装着例

リストケアPRO装着例手掌側より

リストケアPRO 背側より

このサポーターの装着によりTFCC部に対する痛みは大分減少してきましたが、洗い物はお子さんにお願いしてやってもらう様になり安静環境を少し整えてもらいました。この時も超音波はTFCC部と尺側手根屈筋腱と前腕骨間筋へアプローチをしています。

治療開始21日目

手を使用することがかなり多くなりますが、油断していると軽く痛む様子でしたので、サポーターを外してもらい、痛みが出たり重くなるようでしたらサポーターをしてもらう様にして過ごして頂きました。

生活場面によってサポーターを使い分ける

これはミューラー社の腱鞘炎用のサポーターです。
もちろん小指側(尺屈)へ傾けないという部分ではこのサポーターでも代用は可能です。

上からはこの様になります。親指と人差し指の間にサポーターが来るのと、ある程度手のひらまで覆われてしまうのが難点です。
リストケアPROは親指を拘束するストラップが付属品担っていますので、使用しないときは外しておけるので便利です。

日常では特に痛みが無く家事労働をしていなければ十分かと思います。

ご本人様は手首に負担のかかる作業についてはリストケアを使用して、特に使わないときやリストケアを洗濯している時はこのサポーターを使用しているとの事です。

リストケアよりも覆う範囲が広いです。
人差し指と親指は出来るだけ使いたいので安静には適していますが、日常生活動作に対する制限がかなりあります。

夜は手首を動かさないので安心できると思います。
ベルトの返しのプラスチックのパーツが尺骨茎状突起に当たるらしく少し違和感が出るとも・・・

まとめ

ここから1週間が過ぎますと使い過ぎにより(主に家事が原因ですが)痛みが出ましたが、TFCC部よりも尺骨茎状突起に痛みが出るようになりましたが、痛みの程度は大分軽くなりました。

治療開始35日目

寝ている時と車の運転時はサポーターを装着しているそうです。

その後はTFCC部に痛みは出るものの程度は小さくズキンとするような痛みではなくなりました。

治療開始後42日目

テニスラケットの素振りをしてもらったところ痛みが出なかったとの事で、ここから出来るだけサポーターを外した日常生活を送ってもらう様にしました。

治療開始後49日目

期間を1週間空けて生活して頂きましたが、使いすぎた時に時折軽い痛みを感じた以外は、ほとんど痛みが無かったことで次回2週間後にご来院頂くことにしました。

もしこの間に痛みが戻るようでしたらすぐお越しいただくという事で様子を見て何事も無ければ治癒となります。

今回ご紹介したリストケアPRO

アルミプレートがお好きな角度に加工でき、脱着可能な為お洗濯もでき衛生的です。付属の親指ストラップを使いますと、腱鞘炎、ド・ケルバン病、手根管症候群など手首全般にお使いいただける優れものです。

ミューラー社の手首は

手の平や手の甲までしっかり覆われますのでホールド性に優れています。またメッシュ機構で蒸れにくくクッション性も良いので安静を保ちやすいです。

今回のTFCC損傷においては、固定ベルトのバックルに尺骨茎状突起が当たるの事で、やや向いていないかもしれませんがこちらも手首全般の疾患に有効かと思います。

当院ではこのような形で超音波やサポーターを使用し、出来るだけ早く元の生活に戻れる様な施術を心掛けております。