部活動などで熱心にスポーツに取り組んでいるお子さんが、ある日突然足の痛みを訴えてきます。
運動で起こるケガをスポーツ外傷と呼んでいますが、この原因は主にover use「オーバーユース」と言って使い過ぎと言われています。
特に充分な休息を取らないでいると、様々なケガに見舞われてしまいます。その中でも土踏まずが突然痛くなる「有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)」についてお話しします。

有痛性外脛骨とは?

この症状は

・スポーツ活動の盛んな10〜15歳の思春期のお子さん
・筋力低下した女性

多くみられ、運動を繰り返しているうちに徐々に土踏まずに痛みが強く出てきます。

ジャンプやダッシュ、打撲や捻挫がきっかけになって発症することも有ります。始めは片方だけに痛みが出ていても次第に反対の足にも痛みが現れてきます。

 

骨が余分に出てくる?

足部を構成する骨のいくつかに過剰骨(かじょうこつ)が存在している方がおよそ15%います。漢字のごとく、余分に出てるんですね。

本来成長の過程で本体の骨と一体になるのですが、過度のスポーツ活動などで次第に本体から離れてきて痛みが出てきます。

レントゲン像ではトゲの様な骨が見られ、その中の10%~30%ほどの方に痛みが出るようです。

その中でも有痛性外脛骨は過剰骨の中で最も多く、内くるぶしの下方(土踏まずのあたり)の少し膨らんだ所に舟状骨(しゅうじょうこつ)が有り、そこに過剰骨が付いています。

 

ジャンプやダッシュ・捻挫で現れます

過剰骨が付いている舟状骨に後脛骨筋(こうけいこつきん)が付いています。

画像参照:

「むこうずね」と言われる前脛骨筋(ぜんけいこつきん)とともに、足の中心の筋肉として足を支えてます。内くるぶしの下を通って舟状骨に付着している事で、足の関節を動かす役割を担っています。

ジャンプやダッシュは後脛骨筋の柔軟性が失われて、腱が骨を引っ張ってしまいます。また足底アーチ下がりが起こり、足裏がぺったんこになる「偏平足」の助長にも。ジャンプからの着地で足首を捻ったりすることで、土踏まずにストレスがかかると後脛骨筋とは逆方向に引っ張られて痛みが出ます。

 

運動前後に症状が出やすい

内くるぶしの下方(土踏まず)に骨性の盛り上がりが認められ、疲労とともに徐々に症状が出てきます。

  • 痛み・・・圧痛、運動時痛(内くるぶし下方)
  • 腫脹・・・内くるぶし下方の腫れ
  • 熱感・・・炎症が強い場合に起こります

運動中や帰宅時などに痛みが出てきますが、見た目には赤くなったり腫れるなどの炎症症状はあまり診られない事が多いです。

痛みが出始めた時はTYPE-Ⅲが多い

画像診断では重い症状から3タイプに分かれて確認できます。

  • TYPE-Ⅰ 後脛骨筋線維内に種子骨として存在した状態
  • TYPE-Ⅱ 舟状骨と線維性組織でつながった状態
  • TYPE-Ⅲ 舟状骨と骨同士でつながっている状態

ほとんどが軽い状態のTYPE-Ⅲが多いですが、レントゲン上で骨が確認できない時はCTやMRI撮影で確認します。

 

自宅で出来る治療法について

ご家庭で行って頂きたいのは【休ませる】ことです。
使い過ぎによる疲労が根本原因ですので、出来るだけ筋肉を休ませる時間を確保すことが治る近道です。
また症状が重いときは運動制限も必要になります。

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整形外科での治療法

手術は最終手段になります。

  • 保存療法でインソールを使った土踏まずの改善や、リハビリなどを数か月間行っても効果が出なかった場合
  • 早期復帰を目指すプロスポーツ選手など場合
  • TYPE-Ⅰの様に舟状骨から外脛骨が分離してしまい、激しい痛みや日常生活に支障が出た場合

手術が終わった後のリハビリ期間は概ね3~4ヶ月は必要になります。

当院では、手術が必要だと診断した場合は、神奈川区大口通にある「吉野整形外科さん」へご紹介となります。その際には紹介状をこちらで記入します。

※手術法については症状によって違いがありますので、担当する医師と手術リスクも含めて良くご相談ください。

 

手術・薬を使わずに治療する方法

大きくは後脛骨筋の緊張緩和と土踏まずのアーチ形成を行い痛みを消失させます。

超音波治療器

患部の痛みを抑えます。
熱感や腫脹が出ている時はアイシングで冷やしてから超音波治療で炎症を抑えます。
出力を抑えて刺激を受けない様に治療して、炎症をなくしていきます。繰り返しかけていくことで患部の痛みをなくすことが出来ます。

電気刺激療法

後脛骨筋やその他の足の筋肉に軽い電気刺激を与えます。
微弱な刺激で血液循環を良くして筋肉を温めていき、手技療法と併用しながら効果的に筋肉の緊張を和らげていきます。

温熱療法

後脛骨筋やその他の足の筋肉を温めて血液循環を良くしていきます。赤外線やホットパックなどを使います。
超音波や電気刺激でも温熱効果を得ることが出来ます。

運動療法

knee ㏌(ニーイン)と言って、内ももの筋力低下に伴い膝の内側に体重がかかり、土踏まずに体重が掛かってしまいます。
そこで内ももの筋力を養っていくために軽いスクワットで筋力を向上させたり、後脛骨筋のストレッチ又はチューブトレーニングなどを行います。

土踏まずはタオルギャザー運動で動かして緊張を緩和します。
また足の筋肉や土踏まずに負担がかからない様に歩き方指導もしていきます。

装具療法

アーチサポートの為のインソールを使用し、他の治療と並行して2~3ヶ月ほど土踏まずの改善を図ります。
女性の場合は外反母趾も併発していることもありますので、早い段階での使用をお勧めします。
またテーピングなどを併用して歩行時に外脛骨にかかるストレスを緩和させて痛みを取り除いていきます。

 

スポーツ損傷と成長期

運動部に所属している成長期の子供たちは大変起こりやすいです。
大人になるうえでは、成長期に運動をすることは非常に大切ですが、夢中になるあまりに限界を超えてしまう事が原因です。

そのいい例が【成長痛】です。
代表的なのは『オスグット』と呼ばれている膝の痛みです。
この外傷は、太ももの筋肉の使い過ぎによって筋肉と骨の発達にバラつきが出て、完成前のまだ柔らかい骨が成長著しい筋肉によって引っ張られることで痛みが起こります。

軽い状態でしたら1週間ほど休ませると治まりますが、ヒドイ状態では骨の成長が終わる15~17歳でも治らず、手術の可能性もあります。
今回の外脛骨もよく似ていて、後脛骨筋の使い過ぎによります。いつか治るからと言って休まず痛いのをごまかして使い続けると、治りは遅くなります。

しっかり身体を休ませる環境作りは、多くの成長痛やスポーツ外傷を「未然」あるいは「軽度の症状」で抑えることが可能です。
そのためにも、痛みが出たら早い段階からしっかり治療をしていくことで、早期復帰を目指していきましょう。

 

まとめ

有痛性外脛骨とは、成長期に余分な骨が出っ張ってることで、土踏まずが痛くなること。

保存療法の種類は4つ

  • 物理療法・・・超音波治療器、温熱療法、冷罨法、電気刺激療法、手技療法など
  • 薬物療法・・・消炎鎮痛剤など
  • 運動療法・・・ストレッチ、筋力向上など
  • 装具療法・・・インソールなど

余りにも出っ張ってくると、手術適用の場合もある。

日頃の足のメンテナンスをしていきましょう。