「足首の捻挫」経験がある人も多いのではないでしょうか?
スポーツをやっている方・スポーツをやっている子を持つ親にとっては切っても切り離せない疾患です。
適切な処置をしないと「長引いたり」場合によっては「クセづいて」しまって、生涯捻挫に悩まされる事もありえます。特に筋肉や骨が出来上がっていない十代前後の選手にとっては、より一層の理解と処置力が問われる場面です。
今回は「実際の症例」「捻挫とは」などを含めてご紹介し、捻挫の理解を深めて、お子さんが怪我をした時に安心させることが出来るといいですよね。
足首が紫色になってるんだけど、大丈夫??
女子中学生バスケ部に所属。練習中に右足関節の内反捻挫を起こしてしまい、近所の整形外科に受診。
骨に異常はなく、全治3週間の捻挫との診断。当院に来た際も、足を引きずりながら来られました。
問診をすると、前距腓靭帯に圧痛、伸展時には後距腓靭帯に疼痛出現。腫脹、熱感もあり、何より上図の様に内出血が著しく出ています。歩くと何とも無さそうな踵(足裏まで)痛むそうです。
更に内果(内くるぶし)下にも、やや紫色がかり、若干痛むとのこと。上図では解り難く申し訳ないんですが、少し色が変わっているのが見えますでしょうか?
足を捻る際に、外側の靭帯が伸びると同時に+内側の靭帯もぶつかり痛めてるんですね。
①捻挫をしたら兎に角アイシング→電気療法→痛みの激しい外果周辺にSSP療法
早速ベッドにご案内し、アイシング。冷却により炎症と痛みを緩和させます。
痛みが強いと、そこに意識が集中してしまい問診もスムーズに行かない場合もありますので、ひとまず痛みを緩和させるのは大切。
15分程アイシングを行った後、電療。
SSP療法は大阪医科大学 麻酔科により考案されたもので「刺さない鍼治療」の発想からきている優れもの。
疼痛部位に直接刺激したり、関連している筋に付けて遠隔という事もできるので治療の幅がとても広いです。
本人も、「ピリピリするけど痛くはない」との事なので、患者さんへの負担も非常に少ないのがポイント。私、堀田は鍼灸の資格を持っていますが、「鍼がどうしても苦手」という方にはとても良い医療機械だと思います。
②SSP療法が終わった後はMF療法
MF療法は主に「中周波」を用いて刺激を与えるものです。
本人も、仰向けで足首をじんわり刺激されているのでリラックスしたご様子。
SSPとMFの組み合わせにより、捻挫特有の内出血がかなり軽減されます。内出血は老廃物の溜まった血液ですので、早く除去するに越したことはありません。
また、怪我をした本人も患部が青紫色に腫れていたらそれだけで不安になりますので、内出血の有無も確認が必要です。
③内出血を一瞬で消す超音波療法
骨・靭帯・筋肉の損傷に抜群の効果を発揮する超音波。伊藤超短波さんのこの機材一つで劇的に腫れ・内出血班・痛みが改善されます!患部に超音波の刺激を与えることで、疼痛の緩和にも繋がります。
また、設定によっては音波が到達する深さ、どれだけの刺激量を与えるのか、そのペースはどれくらいか。
組み合わせは様々なので、症状の具合や受傷後の経過などを見ながら設定していきます。
超音波をかけると、やや紫色が消えて範囲が小さくなります。当日は痛みが残りますが、内出血班が散れるので、治る速度が早まるんですね。
④足関節の動揺性を制限する為に、サポーターで固定
靭帯が伸びているor切れている為、靭帯癒合を促すためにサポーターで足首のぐらつきを抑えます。90度に固定することにより、靭帯が正しい位置・綺麗に癒合されます。逆に固定をしないと、靭帯が収縮したり、伸びたりするので中々くっつきません。
当院では、腫れがある場合【オルテックスクッション】を作成し患部を軽度圧迫します。柔らかい素材で圧迫すると、寝ている間に腎臓の働きで腫れが治まりやすくなるんですね。※この時足を少し高くして寝ると、更に効果的です。
足首専用のジュニアサポーターアンクルラップを付け、歩行を確認します。私たちが『どう?』と聞くと『えっと・・・』地面に立って頂きます。
『足が着ける!!』
とおっしゃって下さいました。かなり歩行が楽になったようです。
私達も大変嬉しく思います。
靭帯が損傷していると、バランスよく身体を支えるのが難しくなるので、サポーターはとても有効です。
ただ、サイズが合ってなかったり、着け方を間違えていると、サポーターの意味が無くなり、最悪症状が悪化することも十分あり得ますので、先生に相談しながら決めると良いでしょう。
❤受傷から3日目
腫れも引き、紫色が薄くなってきました。
内くるぶしの紫色は3日目で完全に消えています。
毎日通ってもらい、段々と腫れも引いてきましたが、ここで問題。
「足をかばって腰が痛い・・・」
そうです、右の足関節をかばって過ごしていた結果、下半身のバランスが左右で異なってきます。
そうすると、その歪みのダメージを受け止めるのが「腰」になってきます。
特に学生やデスクワークの方は、元から腰が痛い方が多いので余計に痛みが増すことも考えられます。
この日は、足首の施術+腰の施術も行いました。
痛みをかばって生活するのは、どうしても避けられないのでなるべく意識しながら生活し、他の部位に痛みが出てきたら必ず先生に伝えてもらえるとその都度身体を調節します。
外くるぶしの腫れが引いてきたら、リハビリ開始!
❤受傷から5日目
だいぶ紫色も落ち着いてきました。
ここまでくるとアイシングは、行わなくて大丈夫です。
前から腫れを確認し、外くるぶしが浮き上がってきています。ここで、運動時痛との様子を見ながらリハビリ運動を開始。
①ゆっくりと足首の回旋運動を行っていきます。
②ここである程度動いたら次はゆっくり屈伸運動。
③足の裏も押していきながら動きの様子を見ます。
来院当初に比べると、かなり歩行がスムーズとなり、バスケ部の運動にも軽いメニューは参加しています。
ある程度動けるようになってくる時期は、がっつり安静にすると逆に治りが遅くなってしまう事もあります。
無理のない様に動かしてあげると血流が良くなり、痛みの原因となる物質や内出血が流れていくのでより早く治ります。
受傷から7日目で紫色は消えます
ばっちりです。
ここまで綺麗に治りました。
捻挫した日から7日~10日ほどで症状はかなり改善。足背の筋肉に軽い痛みが出てきましたが、これはかばって負担が乗っている部分なので、ストレッチと湿布で良くなります。
毎日当院まで通ってくれた、患者さんと付き添いのご家族のご協力もあり早期回復に繋がりました。
部活にも少しずつ参加してもらい、試合復帰に向けて練習を始めていきます。ここでの注意は
❶いきなり全力で練習を行わない事
❷久々の運動となるので、身体の筋肉や関節の準備が整っていないことが多いのであくまで軽め
❸練習復帰はアップを入念に
❹身体を慣らすつもりで行う事
ここでかなりもどかしさを感じると思いますが、一つ我慢。あと3日で完全回復するから!
身体が慣れたら思いっきり練習に励むと良いでしょう。
学生のスポーツ障害について
学生時代に運動部やクラブに属している人は多いですよね。
特に最近は定番のスポーツから、ダンス、サーフィン、ボルダリングなど、様々な競技が広がっています。
まだ身体を作っている時期(第二次性徴期)に過度なトレーニングや、誤った練習を繰り返し行っていると「使い過ぎ症候群」「オーバーユース」という状態になり、痛みが生じてきます。
よく耳にする疾患として、野球肩やジャンパー膝、シンスプリントなどがありますね。
症状が出たとき、そのまま放置したり湿布で過ごしていたりすると治りが悪くなり、変なクセがついてしまう場合も・・・。
いまはインターネットですぐに情報を取ることができ、とても便利になっているのですが、誤った治療法なども一緒に出回ったりしているのが現状です。
バスケットの試合中での怪我。走って、ジャンプして、切り返して・・・非常に多彩な動きをするスポーツです。もちろん、他のスポーツでもケガはつきものです。特に捻挫はしょっちゅう聞く言葉ですよね。ここで怖いのが
「よく聞く言葉→耳にタコ→軽く見がち」
人間には、こう物事を捉えてしまう感覚があることです。
「捻挫くらいすぐ治る」「ちょっと冷やせば大丈夫」などなど・・・。
学生は、指導者・大人の言う事をしっかり聞いています。
捻挫になったら、痛み止めに頼り過ぎないこと
簡単にいうと「関節に力がかかり、筋や靭帯を痛めた状態」
足首に関しては、ジャンプの着地、方向転換、衝突や転倒など、関節に捻りの動きが加わった時に「グニャッ」と発生しやすいです。症状が酷い時には、パンパンに腫れてきて、内出血により青紫色になってきます。
また、怪我をした時の勢いが強すぎた場合、捻挫と同時に骨折を起こしてしまう可能性もあります。パンパンに腫れてしまうと捻挫か骨折かわからない場合がありますので、必ず医療機関で見てもらいましょう。
整形外科でレントゲンを撮り、骨折や脱臼が無ければほとんどの場合「捻挫」と診断されます。ただ、この時に処方される湿布や痛み止めを使用しても、一時的に痛みが和らいでいるだけで治っているわけではありません。
「薬を飲んだら痛みが消えたからもう大丈夫!」
というのは、再発する確率が非常に高く危険ですので、要注意。
なので、痛くて日常生活に不便があったり、夜に痛みが強すぎて寝れない時には痛み止めは有効です。
また、薬が思っていたより効かなかったり、痛みが強いから分量以上に飲もうとしている際は、必ず医師に相談してください。
自分の判断で薬の量を増やしたり別な薬を追加したりすると、内臓に負担がかかったり、怪我の痛みがわからなくなって患部に余計な負担がかかってしまいます。
また、副作用も強く出る場合があるので、自己判断で薬のコントロールは行わないでください。
捻挫を甘く見ないで!本当の目的は『将来に影響する身体バランスを取り戻す』
捻挫には重症度がありⅠ度からⅢ度まで分類されます。
これは損傷した部分の筋肉や靭帯が、どのような状態になっているかで判断されます。整形外科では主に画像診断(レントゲンやCT)を使って判断。整骨院では画像分析ができませんので、視診・触診が基本となります。
※最近ではiPadに連動したエコー検査を実施する院も増えてきました。患者さんが画像を観ながら「どこの靭帯が切れているのか?」が解りやすく、治っている経過も把握し易いんですね。
ここでまず、骨への影響(骨折や脱臼)の有無・合併症が無いか?を調べます。
そして整骨院では、問診の際に「整形外科的テスト」を行い、実際に関節を動かして靭帯の損傷具合を調べたり、痛みがどの部分にあるのかをピンポイントで探したりします。
また、感覚の有無や血管の拍動を確認して、神経損傷・血管損傷がないかも確認することができます。
このように、実際に触ったり動かしたりして捻挫の損傷具合や、他のケガの可能性を考えて、より症状を明確に絞っていき適切な治療をするための準備をします。
ここで骨折の疑いがあったり、実は頭を打っていて脳内出血の疑いがある、と考えられたら迅速に専門医へ行ってもらう事ができるので、整形外科的テストは整骨院で行える大切な検査法です。
分類 | 症状 |
1度(軽度) | 靭帯が引き伸ばされた状態
痛みは軽く、腫れも少ない |
2度(中度) | 靭帯の部分断裂
痛みの為、体重をかけて歩くのが難しい |
3度(重度) | 靭帯の完全断裂
足関節に緩みを生じる 動揺性が著しい場合は手術になることもある |
現場で多いのはⅠ度~Ⅱ度と言われています。
1度だと、症状が軽いケースが多いのでついそのままにしてしまいがちですが、ダラダラと痛みが長引く場合もあるので注意が必要。
この時に、身体が怪我をした足に負担をかけないように歩こうとします。この状態が「怪我をかばった状態」
始めは逆の足が痛くなり、次に股関節や腰が痛くなり・・・と足首の捻挫の影響が様々な所に出てきます。このまま放置していくと、慢性的な痛みとして残りやすいので治るまで時間がかかってしまいます。
恐ろしいのが、「放っておいたら、痛みが何となく消えてきた」という状態。
痛みをかばうという事は、身体の左右どちらかに体重がかかるという事。要は身体が歪んだ状態となります。
その状態で「何となく痛みが消えた」という事は、身体の歪みに慣れてしまったという事になります。これではスポーツにおいてベストなパフォーマンスは難しいですよね・・・。。
また、この歪みは身体に染み付いてしまうと何年もこの状態で生活する事になります。そうすると、大人になっても慢性的な痛みが残りやすく、怪我をしやすい身体になる可能性が非常に高い。
捻挫は、しっかり治しておかないと将来的に影響が出てくる確率が高いので放置しない事をオススメします。
選手がケガを起こしたら迅速に「RICE処置」を行うと良いでしょう。治り具合に差が出ます。捻挫した初期の頃は、熱感・腫脹・疼痛が著しくでますので、基本のRICE処置がお勧めです。
※現在欧米では、このRICE処置が早期回復に関係ない学説が出ています。ただし、当院では臨床経験から得たもので『最短で治す』ことを心掛けております。その為学生の捻挫にはアイシングは必須と判断しております。
「捻挫しちゃったけど、湿布して放っておけばいいんだ」と勘違いさせてはいけません。
痛みが引いては捻挫、また引いては捻挫・・・と繰り返してしまいます。
要は「クセ」になってしまうのです。
また、この時に痛みが引いたのを「治った」としないでください。
ケガした部位が治ったのではなく、そこの靭帯・筋肉を使わないように「他の筋肉」が頑張って支えているのです。
これは痛みを「かばった」状態です。
この状態が続くと、右足首を捻挫したのに左膝が痛い、腰が痛いと他のとこまで痛くなるのです。
これではベストパフォーマンスはできないですよね?
なので、捻挫を甘く見て欲しくないのです。
特に学生は成長期真っただ中。
変なクセが身体についたまま成長すると、大人になってから慢性的な肩こり・腰痛など様々な症状が出る可能性があります。少しでも痛みや違和感が出たらこちらへ