「あぐらがかけない、胡坐をかこうとしても後ろにふんぞり返ってしまう」
「開脚で脚が開きにくい、というか全く開かない」
「膝をかかえて、太ももをお腹につけることができない」
「太もものつけ根がなんか変」
「立ち上がる時や歩くとき、動かし方で脚の付け根が痛い」
このような経験はございませんか?
「あるある」と思う方は、股関節の動く範囲が狭くなっています。
変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)とは?
軟骨や骨がすり減り、関節が変形して、痛みが出たり、関節の動く範囲が狭くなったものが変形性股関節症です。
歳を重ねることによって、軟骨や骨がすり減ることが原因です。
子どもの頃、股関節がしっかり成長できずに関節の受け皿が小さい方がなりやすいです。
徐々に軟骨や骨がすり減り、痛みが出たり、関節の動く範囲が狭くなっていきます。
日常生活での不便さ
股関節に痛みがあると、立ち上がったりしゃがんだりするのが大変になります。
歩くときも痛みを伴いやすいです。
痛みで動きが悪くなると、太ももがお腹に近づきにくくなって、足の爪を切るのが難しくなります。
病院での診断とレントゲンについて
まずは、問診でどうして痛くなったとか、どうすると痛くなるとか、熱は出なかったかとか確認されます。また、股関節の動く範囲の検査も行われるでしょう。レントゲン写真も撮影されると思います。
発熱の後に強い痛みが出たのなら、化膿性股関節炎(かのうせいこかんせつしょう)の疑いがあるので、血液検査が追加されます。炎症反応や細菌が検出されれば化膿性股関節炎です。
運動後に出た痛みで、レントゲン写真から、骨折や変形が無く正常の場合は単純性股関節炎(たんじゅんせいこかんせつえん)と思われます。
変形があれば変形性股関節症(へんけんせいこかんせつしょう)と診断されるでしょう。
これで痛かったら陽性?!自分でできる触診と動診
膝がしらを反対側のわきの下の方向に抱えたとき、太もものつけ根に痛みが出たり、違和感がある方は怪しいです。
①そ径部(コマネチってやるところ、鼠径靱帯:そけいじんたい)
②足の裏同士をくっつけてあぐらをかくように座った時に突っ張る筋(縫工筋:ほうこうきん)
③足の裏を見るように足を持ち上げたときに浮き上がる筋(長内転筋:ちょうないてんきん)
①②④でできた三角の中を押して痛い人は更に怪しいです。
前述の三角のイラストです。三角の上の辺に近い所に股関節があります。
治し方
化膿性股関節炎は病院でしっかり治してください。
ここでは軽度の変形性股関節症と単純性股関節炎の治し方について紹介致します。
まずは安静です。痛みが落ち着いてきたら少しずつ動かしていきましょう。
申し訳ありませんが、関節の変形は治せません。変形があっても動けるように、痛みが出にくくなることを目的とした体操、ストレッチ等を紹介いたします。
1.股開き
股関節を軽く動かす体操です。痛くてできない方はお医者さんに相談して下さい。
①膝を曲げた状態で仰向けに寝ます。
②膝がしらを開いたり、閉じたりします。
③痛みのない範囲で開きます。開くときは少しずつ内またの力を抜いてみて下さい。
急にパッと力を抜くと痛くなるので、ゆっくりとお願いします。
痛みが出ないようでしたら、リズミカルに10~20回ほど繰り返してください。
2.横向き股開き
股関節を安定させる筋肉を鍛えます。女性ですと、産前産後にも結構重要です。
①膝を曲げた状態で横向きに寝ます。
足で枕を挟み、おへそが斜め下を向くように。
身体が床に向くようにずらします。この時、上になっている膝は前側にずれます。
写真3
スタートポジションができましたら、上側の膝を開きます。
膝と膝の間にテニスボール1個分入る程度で結構です。
写真にはテニスボールが写っていますが、実際に体操をする時は不要です。
膝を開いたり閉じたりを10~20回程度繰り返します。
ここで注意していただきたいのは、おへそは常に斜め下(床方向)に向けて下さい。
また、膝を開きすぎるとおへそが横を向いたり斜め上を向いたりしますので、膝は開きすぎない様にお願いします。
上手にできていれば、おしりの奥の方がだるく疲れてきます。太もものつけ根、前側が疲れる場合はおへそが下を向いていない可能性が高いです。姿勢を確認してみて下さい。
3.足裏壁押し
お尻の大きな筋肉を鍛えます。優しいです。
頑丈そうな壁や柱を使って行ってください。
ふすまや強度の弱い壁では行わないでくださいね。
①壁の前で膝を曲げた状態で仰向けに寝ます。片方の裏で壁を押します。
床と太ももが作る角度は45°くらい、すねと壁が作る角度は直角になるように、真っ直ぐに押します。
このように壁が押せるくらい、壁から離れて寝て下さい。近すぎても遠すぎてもだめですよ。
②息を吐きながら、足裏で壁を押します。
息を吐き終わったら力を抜きます。
力を抜くときに息を吸います。
呼吸に合わせて壁を押し、10~20回繰り返します。
4.ブリッジ(尻上げ)
お尻の大きな筋肉を鍛えます。少し大変になります。
①膝を曲げた状態で仰向けに寝ます。
②お尻を持ち上げます。
③しっかりお尻を持ち上げて、背中と太ももが真っ直ぐになるようなイメージで。
10~20回繰り返します。
両膝が離れないように行うと、更に効果的です。
腰が痛い方は無理をしないようにお願いします。
お尻を持ち上げた時、身体がグラグラする方は、腹筋(体幹筋)が弱いかもしれませんね。
5.横向き壁押し
お尻の大きな筋肉と中くらいの筋肉を鍛えます。寝る位置が重要です!
①壁に背中を向けて横向きに寝ます。寝る位置が大切です!
自分のすねの長さ分壁から離れた所に横向きに寝ます。
下になっている足は前側に曲げておきます。上になっている脚は膝だけ曲げて足の裏を壁に付けます。
②胴体と太ももが一直線、膝は直角に曲げ、足裏全体で壁を押します。
呼吸に合わせて足裏で壁を押します。
息を吐きながら押して、吸いながら力を抜きます。
10~20回繰り返します。
6.横向き壁押し股開き
結構きついです。でもお尻が引き締まります。
先程の横向き壁押しのレベルアップバージョンです。
①前述の体操と同じで、壁の前で横向きになり、壁を足裏で押します。
②壁を押したまま、股を開きます。
10~20回繰り返します。
注意して頂きたいのは、「壁を押したまま」行う点です。押しながら開くと、キューっとお尻が締まります。
7.前後まとめてストレッチ
時短ストレッチ。股関節の前側と後側を同時にストレッチします。
①仰向けに寝ます。
②両手を使って、片方の膝がしらを同じ側の胸に引き寄せます。
しっかり膝がしらを胸に近づけると、反対側の足が少し浮きあがります
②浮き上がった片方の脚はピンと伸ばして、もも裏、膝裏、ふくらはぎ、かかとを床にギューっと押し付けます。
③20秒~1分程度、体勢を保ちます。
膝を引き寄せている方のお尻と、反対側の股関節前側の筋肉が伸ばされます。
太ももを後ろに蹴りだす動きに制限がある方は、ひざを伸ばしている方の太ももがかなり浮き上がります。
無理のない範囲で脚を押し付けて下さい。
太ももをお腹に近づける動きに制限がある方は膝がしらが胸に近づきにくいです。太もものつけ根に痛みを伴うかもしれません。この様な時は膝がしらを少し外に逃がして、膝がしらが胸ではなく、同じ側の脇の下に向くようにしてみて下さい。
8.前側のみストレッチ
股関節の前側を更に伸ばします。
①片膝立ちになります。
片脚は太ももの長さ分くらい前に出します。両手を、前に出している足の少し前につきます。
②前に出している足と両手に体重を乗せるように、身体を前に移動させます。
すると後ろになっている脚の太もものつけ根の筋肉が伸ばされます。
20秒~1分程度そのまま姿勢を保ちます。
あまり伸びている感じがしない方は、お尻が後ろに引けていませんか?
脚が後ろになっている側のお尻を少し前に出してあげるとつけ根が伸びてきますよ。
膝が前に出ている側の太もものつけ根が痛かったり、引っかかる感じがする時は、前に出ている膝を少し外に向けてみると楽になります。
自宅でできる予防法
毎日、何かしらの体操をしていると、「今日は楽に出来た」とか「今日はいつもより大変だった」「痛かった」など、変化を感じ取ることができます。どれでも結構ですから、紹介しました体操を毎日していただき、痛くなる予兆がわかると悪化を防ぐことができるのではないでしょうか。
なかでも1.股開と2.横向き股開き がおすすめです。
前者は簡単。調子が良くなってからも続けていただくと、その日に調子をみるのに役立ちます。後者は関節を安定させる筋肉を安全に維持強化が出来ます。地味にきついです。
体重がかかる関節ですので、体重を減らすと負担が減ります。体重が増えたら痛くなるようになったという方は、元の体重を目指していかれるとよろしいかと思います。
股関節痛で気を付けるべきポイント
1、高熱が出た後に股関節の強い痛みが出た場合はお医者さんに
2、痛みが落ち着いてきたら体操
3、体操を続けて変化を感じて予防に役立てる
股関節炎(こかんせつえん)とは?
単純性股関節炎と化膿性股関節炎に分けられます。後者の方が重症です。
単純性股関節炎(たんじゅんせいこかんせつえん)
特に原因がないか、激しく運動した後、股関節が痛くなる疾患です。
幼児さんに多くみられますが、まれに大人もなります。
だいたい2~3週間で良くなります。
ひどいときは股関節だけでなく、膝や太ももも痛くなります。痛くて足を引きずるように歩くことも。
血液検査をしても異常なく、レントゲンでも変形はみられません。
関節液(関節の中の潤滑液)を検査しても細菌は見つかりません。細菌が見つかれば化膿性股関節炎になります。
化膿性股関節炎(かのうせいこかんせつえん)
股関節に細菌が入り込んで炎症が起きているものが化膿性股関節炎です。
免疫システムがしっかりできていない赤ちゃんに多くみられます。
痛みが強く動けず、感染した菌によっては高熱も出ます。血液検査では炎症反応があったり、細菌が見つかったりすることもあります。
骨の成長に大切な成長軟骨という部分が炎症で損傷をうけてしまうと、股関節がしっかり成長できないこともあります。将来の変形性股関節症の原因になるかもしれません。