つい先日、女性の高齢者の方が手首にギプスをはめて来院されました。痛いので何とかして欲しいとの事でしたが、手の指が腫れてしまっていた事もあり、病院へ転医していただきました。
以前来られていた患者さんでしたが、他院の診察券を出して「手が痛いので何とかして」との事でしたが認知症を患っているため、恐らくこれまでの記憶で他院様とこちらが一緒になってしまったのでしょう、どこの病院で治療したかわからない状態でしたので、まずは最寄りの病院へと院長が金沢文庫病院へ付き添っていきました。
この時の手の状態は
①外せないタイプのギプスで固定されて
②手が倍にむくみ
③血行も良くない状態
そのため、最寄りの金沢文庫病院へお送りいたしました。
後に看護師さんがお見えになり、こちらの事情を聴きに来られました。その際に「おそらく整形さんで直したのかも?」と言っていましたが、次の日やはりそうだと判明いたしました。
大きなケガをされますと、突然認知症になったりする事もあります。
認知症をすでに患っている方が骨折をしてしまうケースも多いです。
軽度~中度ですと、固定装具を外してしまう危険があるため、出来るだけお身内の方がケガの事情や通院をある程度理解してサポートいただけると早く良くなりますので、こういったケガを知っておくことが大切です。
高齢者に多いケガBest4
高齢者の方に起こりやすいと言われている骨折が4つあります。1番と2番が特に多いとされてます。
1.手首の骨折(コーレス骨折)
2.背骨の骨折(圧迫骨折、いつの間にか骨折)
3.股関節の骨折
4.腕の骨折
コーレス骨折・スミス骨折
転倒・尻もち・つまづいたり、手を衝いた時に起こってしまう、手首の骨折です。
圧迫骨折
猫背のまま過ごしますと、いつの間にか背骨がつぶれてしまうことから「いつの間にか骨折」とも呼ばれています。
尻もちをついたときに、下からの真っ直ぐな衝撃で、背骨がつぶれてしまいます。片側で尻もちを衝くと、3番の股関節が折れてしまいます。
腕の骨折
肘をついたときや、肩から地面に倒れた時などで起こりやすく、1番同様お風呂場で起こることも多いのでご注意下さい。
特に高齢者の方は骨が弱くなっている事もあり、つまづいて手を地面に衝いたときに、自分の体重を支え切れないために起きてしまいます。気を付けないといけないのは、同時に頭を打ってしまう事も十分考えられますので、脳出血などの確認が必要です。
手首の折れ方4パターン
手首は大まかに①腕の骨と②手の骨で作られています。
a. 親指側・・・橈骨(とうこつ)
橈骨は【たわむ】と書きましてフタをかぶせる時の動作でこの骨がたわみ(動き)ます。
b. 小指側・・・尺骨(しゃくこつ)
尺骨の「尺」は長さを表しており、古代ローマや古代中国で肘から手首までの長さを「尺」という単位で示していたところから名づけられていたようです。(諸説あります)
手のひらは8つの小さな骨が集まって出来ていて、そのうち2つの骨が手首を作っています。
親指側から
a. 舟状骨(しゅうじょうこつ)
舟のような形がこの名前の由来となっているようです。
b. 月状骨(げつじょうこつ)
月の形からこの名の由来となっているようです。
手首の関節は【橈骨・舟状骨・月状骨】で作られていて、尺骨はこの中に含まれていないのです。
1.コーレス骨折とは?
1.コーレス骨折 手首の骨折で最も多い骨折です。
2. スミス骨折
3.バートン骨折 2種類あり
4.茎状突起骨折(けいじょうとっきこっせつ)
2種類あり、尺骨では1や2の骨折と一緒に起こることが多いです。
手首の骨折の代表格で、別名:橈骨遠位端部(とうこつえんいたんぶ)骨折と言います。橈骨の遠い端っこの部分で折れたという事で「手首」を表しています。
高齢者の方が転倒して手を衝いたときに、自身の体重を支えられなくなると、腕の骨のカルシウム分があまりないので折れてしまうのです。(特に中高年女性に多いです)
折れた骨の手首側が手の甲の方にズレるとコーレス骨折となり、手のひら側にズレるとスミス骨折になります。
特徴的な腫れ方で、見た目がフォークの形に似ていることから、この状態を【フォーク様変形】と言います。
手首に近い所は、ほとんど筋肉が無い所ですので、折れた骨で腱や神経など傷付けてしまう事も有ります。しっかり治す必要があります。
最新の治療ではキレイに治りやすい
最近の整形外科では、麻酔を効かせてから腕に乗っている手首を引っ張って、元の位置に合わせます。この時、引き手を緩めて位置がずれてしまわなければギプスなどで固定します。
しかし位置がズレてしまう時や、骨の一部がズレたまま動かせない場合は手術をするとキレイに治ります。一見痛そうに思いますが麻酔が効いていますので痛みは感じません。
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①直接ケガした所を開かずに、X線で透視しながら鋼線を刺して骨折した所を固定する方法
②骨折したそれぞれの骨にピンを指して、装置を取り付ける方法
③直接ケガをした所を開いて、骨同士を戻してからプレートで固定する「ロッキングプレート」
この方法で手術を受けると、手首の関節が早い段階から動かせるので、復帰が早くなります。
※お子さんの骨折では、成長期の場合は特に骨も長く太くなりますので、少しズレて着いたとしても成長につれて太さが揃います。
手首リハビリ方法
固定されましたら、ゆっくり「グーパー」を繰り返し行って関節が固くならいよう、良く動かしておいてください。そのほか腕の関節も同様に動かすことをお勧めします。こちらの記事をご参考下さい↓
骨折→手術後、後遺症で「曲げれない手首を動かせる」リハビリ方法
特に肩は、肩甲骨とともに大きく動かしてください。
高齢者の方は動かさないとアッという間に固くなってしまうので、周りにいる方が見てあげると良いでしょう。
もしも手首が折れてしまったら?
手を付いた際に、もの凄い痛みと腫れが襲ってきた場合は、恐らく骨が折れていると思いますが、同時に手首の外側(小指側)にある「ポッコリ」出ている骨があります。これは尺骨にある茎状突起(けいじょうとっき)と呼んでいますが、この部分も手首を折った際に一緒に欠けたように折れていることが多いので注意が必要です。
自分の胸の前で
① 折れた手首を持って支える。
② 折れていない方の肩に手を乗せて肘を持って支える。
大判スカーフ、ショール、マフラーなどお持ちでしたら、対角線の端同士を結んで首にかけ、折れた手を通して三角巾の代わりにして下さい。それも無い時は、大きなゴミ袋などでも代用が効きます。
片手しか使えませんので、すぐに最寄りの整形外科や整骨院へ受診してください。
整骨院では、早期によくなる為に適切な応急処置を施し、手術を要する場合は近隣の病院や整形外科にご紹介できます。