スポーツが原因で起こるケガをスポーツ損傷(傷害)と言います。
その中でも『偏平足』という言葉をよく聞きませんか?
「へんぺいそく」とは、様々なスポーツ障害を起こす原因の一つになっています。なぜ偏平足がケガに繋がるのか?その理由と予防法をお話いたします。
スポーツ損傷とは?
①スポーツ外傷
スポーツ中に急に大きな力が加わって起こるケガ(骨折・捻挫・脱臼・肉離れなど)
②スポーツ障害
運動動作の繰り返しにより、骨や筋肉、靭帯などが過剰に酷使されて起こる故障(オスグッド病・野球肘・ジャンパー膝など)別名【使い過ぎ症候群】
偏平足はスポーツ障害に入りますが、そのまま対策をしないでおくと、更なるケガに繋がります。
スポーツ損傷(傷害)を起こしやすい原因
- 普段あまり運動をされない方が突然体を動かしたとき
- 運動に慣れている方でも限界を超えて負荷をかけ続けたとき
- 癖のある独特の動きをされる方
- 偏平足の方
- 底のすり減った靴を履き続けている方
土踏まずの役割とは?
赤ちゃんの時には土踏まずは有りませんが、成長につれて立ち歩きをしていくことで、段々と土踏まずが作られていきます。
足裏には足のベースとなる足根骨(そくこんこつ)と指の骨になる中足骨(ちゅうそくこつ)で縦と横のアーチ状の弯曲を作り、骨同士は靭帯で結ばれながら筋肉や腱が補強しています。
その縦アーチに当たる部分を土踏まずと言い、歩いたり、飛んで着地するときの衝撃を緩和させる役割があります。
若い子が扁平足になるとどんな症状になる?
両足を地面に着けた状態で土踏まずに鉛筆の太さが入らないと偏平足気味と言われています。
繰り返しジャンプやダッシュをすると、衝撃吸収のバネとしての役割があるアーチの負担が増えてきて、次第に土踏まずが潰れてなくなる状態を扁平足と言います。
成長期のお子さんたちは筋肉や骨、靭帯など体を構成している組織は、発育途上で十分な力を備えていません。アーチがあった時と違い足の内側に体重が乗りやすくなる為、靴の踵(かかと)の内側だけがやたらと減ってきて『外反偏平足』になります。
足底腱膜炎
偏平足では一番起こりやすいケガになります。主に足の裏に起きる痛みで「起床時の歩き始め」に多く、しばらく歩いていると痛みが無くなる事も有ります。土踏まずにある足底腱膜(そくていけんまく)に2つの原因で起こります。
- 足裏にかかる負荷や繰り返される接地した時の土踏まずへの衝撃
- 蹴り出した時にかかる土踏まずへの引っ張る力
偏平足ではすでにこの状態になっていますので炎症が起こりやすくなります。
土踏まずのアーチには、足底腱膜(そくていけんまく)という組織が踵(かかと)から足の指に向かって付いています。
過度に繰り返されるジャンプやダッシュなどによる衝撃と疲労で伸びてしまうと、必要以上に足先に腱膜が引っ張られ、ふくらはぎ側の足の筋肉の柔軟性の低下や筋力不足などで互いに引っ張られやすくなり、衝撃吸収が出来なくなります。
シンスプリント
参考文献:いしゃまち
内側の縦アーチの所から内くるぶしを通り、スネに向かって付いている後脛骨筋と土踏まずが、過度のジャンプやダッシュで起こる衝撃を吸収出来なくなってくると、足首に近いスネの骨の内側を中心に衝撃が集まり炎症を伴う痛みが出てきます。偏平足になってしまうと発生率は上がります。
有痛性外脛骨
シンスプリントと同様に、後脛骨筋の土踏まず側に外脛骨(がいけいこつ)と呼ばれる過剰骨(かじょうこつ)が土踏まずの消失とともに引っ張られてしまい。痛みが生じます。偏平足になりますとアーチが引っ張られてしまう事で後脛骨筋とは逆方向にテンションがかかり痛みが出ます。
アキレス腱(周囲)炎
参考文献:なかたに鍼灸整骨院
およそ1トンまでの負荷にも耐えられるアキレス腱が、ダッシュやジャンプしたりと繰り返し負荷がかかると徐々に腱の柔軟性が無くなり、周辺の組織にまで損傷が広がります。
偏平足による衝撃吸収が無くなることで、よりアキレス腱や周辺組織に直接ダメージがかかりやすくなります。
種子骨障害
足の親指の付け根に痛みが出ます。足の親指は歩く際に「地面をつかみ蹴り出す」重要な役目があります。足の裏が接地した時に偏平足が有りますと、後ろに蹴る力がすでに働いているために種子骨が腱によって擦られ炎症が起きやすくなります。
踵骨骨端症・踵骨滑液包炎
踵の骨に付着しているアキレス腱が運動による不可と使い過ぎによる疲労で、踵の端にある骨が成長する柔らかい部分で壊死や炎症を起こす病気です。10歳前後の男の子に多く、これも偏平足では足底腱膜の引っ張る力が踵にかかっていますので直接的な原因にはなりませんが起こりやすくなります。
こちらもアキレス腱のつけ根にある踵の骨に滑液包が付いていて、腱と擦れて炎症が起こります。偏平足があるとアキレス腱とは反対方向に踵の骨に力が掛かりますので炎症が起きやすくなります。
かかと(踵骨)周辺が痛み出したら!?
痛みが起きて3日間は炎症期になります。この時期には必ず4つの処置を行って下さい。
- Rest(安静)・・・患部の二次損傷を防ぐため、休ませて下さい。
- ICE(冷却)・・・痛みが強いときや熱を持っている時は15分~20分程冷やして下さい。
- Compression(圧迫)・・・患部の内出血や腫れを防ぐため、テーピングや包帯・サポーターなどで軽く圧迫気味に固定します。
- Elevation(挙上)・・・心臓より高い位置に患部を上げておくことで、血液循環を良くして腫れを抑えていきます。
整骨院での治療法
偏平足による足の痛み自体は痛む場所により診断が異なりますが、偏平足自体は固くなっている足底部の腱膜や靭帯・後脛骨筋などの緩和を目指します。主だった治療法は
- 電気治療
- 温熱療法・冷罨法
- 手技療法
- 超音波治療
- 装具療法
- ストレッチング
特に偏平足の場合は足底板(インソール)を靴に入れてアーチ作りすることで、足の筋肉への負担も軽減できます。
生活指導でもタオルギャザー運動や時期に応じたストレッチ等の運動指導を行っていきます。
ご家庭内で出来る簡単予防法
偏平足を予防するには十分なケアが必要です。
- 休養で筋肉を休ませ回復させること。
- タオルギャザーなどのストレッチでアーチを回復する。
- 後脛骨筋の緊張を緩める。
- 障害が発生したら、患部が緩まるように練習量を減らすか、ある程度の休養が必要になります。
- 周辺の痛みがあるときは最寄りの整骨院や整形外科で早めに診察を受けてください。
後脛骨筋のセルフ緩和法
スネの骨周辺の筋肉に疲れを感じたらやって見ましょう
1.仰向け・座位にて膝を曲げます。
2.片方の足を上げて膝頭に乗せます。
3.乗せた足をスネの筋肉の方向に向かって、膝頭に体重を乗せるようにします。
4.乗せた足を前後させ足の重みでマッサージ効果が生まれます。
5.反対側の足も同様に行います。
むこうずねの筋肉も疲れを感じている時は、指4本を揃えてスネの筋肉に当てて「グリグリ」と少し強めに押してあげると太ももの筋肉まで緩みます。
足底腱膜のセルフストレッチ法
タオルギャザー以外もやって見ましょう。
1.足を伸ばした状態で座り、つま先を上に向けて足首を90°にします。
2.つま先と土踏まずの間位をつかんで足底腱膜を反らします。
3.元に戻して、内側に捻ります。
4.元に戻して、外側に捻ります。
足を延ばした状態で届かなければ膝を曲げて頂いても大丈夫です。
成長期は事前のケアが大切です
成長期の体はまだ発育途中で、新しい細胞に変わりやすく治りも早いのですが、痛みが出るまで気が付かないことが非常に多いのが現状です。
『痛い』というまで放置せずに筋肉を十分に休ませて、マッサージやストレッチ等で足の筋肉を緩めていきましょう。また屈伸運動や股関節の柔軟性を上げて太ももの筋肉を緩めておくと、足の筋肉も緩みやすくなりますので、よりケガしにくくなります。