五郎丸 肩鎖関節脱臼
参照:AFP bbnews

ラグビーワールドカップで一躍人気を誇った五郎丸選手。未だに「五郎丸カット」や「五郎丸ポーズ」が流行っていますよね。日本代表での栄光を手にした後、スーパーラグビーのレッズに入団。レッズの地元ブリスベンでも大歓迎を受け活躍。

先月21日のサンウルブス戦で「肩鎖関節脱臼」の為手術を受けて成功はしましたが、診断は全治12週間。スーパーラグビー残り3試合から完全に戦線離脱という事態に。

日本代表の試合、対カナダ・対スコットランド戦の計3試合のテストマッチも断念。五郎丸選手は公式ブログで「1日でも早くフィールドに帰れるように努力したい」と語っています。

五郎丸選手公式ブログ

そして、レッズからフランス1部リーグの強豪「トゥーロン」に加入決定。8月の仏リーグに残念ながら間に合わない見込みですが、日本のトッププレイヤーとして活躍が期待されます。ニュースを見ていると、どーも皆さん『ふーん』という感じですが、どんだけ凄いのか?!日本の野球で例えると、プロ野球選手がメジャーリーグに行くようなもんです!マジで凄い!!

今季は絶望的と言われていますが、そもそも「肩鎖関節脱臼」ってどんな怪我なんでしょうか?ラグビー選手やアメフト・格闘系に多い怪我なので解説していきます。

ラグビーや柔道に多い「肩鎖関節脱臼」とは?

①ラグビー・レスリング・柔道等、身体と身体のコンタクトが強い競技に多い怪我
②自分と相手が接触し
③肩を直接地面に打ち付けた時に起こりやすい

五郎丸選手は相手をラインアウトにさせたく吹き飛ばしたかったみたいですが、肩の当たり所が悪かったんですね。それでも大学の頃よりかは遥かに守備が上手くなりましたが。

肩鎖関節

(守屋カイロプラティック様参照)

肩鎖関節脱臼というのは、強い衝撃が加わることによって肩鎖関節が正常の位置から逸脱してしまう事を言います。関節は肩鎖靭帯で繋がれており、肩を上げる時に大切な役割を果たす。

肩鎖関節から胸鎖関節を繋ぐ鎖骨と肩甲骨で構成さていますが、脱臼が生じると鎖骨が上方へずれる為、鎖骨と肩甲骨を繋ぐ靭帯鳥口鎖骨靭帯が断裂し肩を動かすことができず、腕が上がりません。

外見は明らかに鎖骨が左右対称では無くなり、一目でわかります。因みに鎖骨骨折も同時に起こりやすいですが、骨折の場合は身体を直立に立つことさえも困難となります。

関節のズレた程度と方向により3つに分類される

肩の外側を強く打ち付けた時、関節がのズレた程度と方向によって、

①捻挫 Ⅰ度
②亜脱臼 Ⅱ度
③脱臼 Ⅲ度

~捻挫~

肩鎖靭帯の部分的な断裂。鳥口鎖骨靭帯・三角筋・僧帽筋は正常でX線検査では透き通ってしまうため異常が見つかりません。
ちょっと押されると痛いかなー状態です。

~亜脱臼~

肩鎖靭帯が断裂し、鳥口鎖骨靭帯も部分的に断裂・痛みます。三角筋・僧帽筋は正常で、X線検査では関節の隙間が拡大して、鎖骨の端がやや1~2㎝上にずれています。
普通に痛いです。肩が途中まで挙がりますが痛みが強まるのでガクッと力が抜けます。

~脱臼~

肩鎖靭帯・鳥口鎖骨靭帯共に断裂しています。三角筋・僧帽筋も鎖骨の端から完全に離れていることが多く、X線では鎖骨の端がボコッと上にずれているのが分かります。
めっちゃ痛いです。
経験者は分かりますが失神レベルです。
肩がそこにあるのか?!と思う程力が抜け動かせませんし立てません。身体を前のめりにしなければ歩けない程です。過去に私も試合中経験しましたが、一気に寒くなる不思議な感覚です。

肩鎖関節 脱臼

時間が経つと、腕の方に青っぽい皮下出血が現れます。人体が断裂している為内出血が発生し重力で腕の方に降りてくるんですね。痛めた部分は少し赤く腫れあがります。腫れているのか骨が突き出しているのか微妙ですが、確か何か鎖骨が突き出ているぅぅぅという感じで本人はうずくまるだけです。

五郎丸選手は一番重い「脱臼」をしています。手術が成功したとはいえ、直ぐの復帰は不可能です。同じような衝撃が入るとまた切れてしまう恐れもあります。

肩鎖関節脱臼をするとポコポコ鎖骨が浮いてくる

捻挫・亜脱臼・脱臼いずれも肩鎖関節に痛みがあり、運動時の激しい痛みと腫れが出てきます。肩鎖関節部分を押して痛かったら、もしも3つのどれかに当てはめる場合は、断裂の可能性があるので診断を受けて下さい。

完全脱臼である場合、鎖骨の外側の骨が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出します。

飛び出した鎖骨を上から押すと、ピアノの鍵盤を叩いているように上下に動いて見える為「ピアノキー症状」と呼ばれます。肩鎖関節が脱臼している特徴的なサインです。この際鎖骨が『ポコっと』浮き上がり、鎖骨を押すと元の位置に戻りますが、指を離すと上に上がってきます。

脱臼後一般的な治療法とプロの違い

Ⅰ 捻挫の場合

三角巾で手を吊り、始めの2~3日は患部を冷やす。その後は患部を暖めて痛みと腫れが引いてきたら肩関節の軽めの運動練習を開始します。三角巾の固定は2~3週間で十分です。

Ⅱ 亜脱臼の場合

三角巾やテーピングによる固定を2~3週間行います。その後、肩関節周囲の筋肉に負担をかけないようにして肩関節の動きをよくする練習を開始。肩関節の動きがよくなれば筋力の回復訓練を行います。2ヵ月間は重量物の持ち上げやコンタクトスポーツは禁止。

Ⅲ 完全脱臼の場合

ご高齢者等手術が困難な場合と、時間をかけてゆっくりと治療を望まれる方は、亜脱臼と同様の治療法を行います。若い年代やスポーツ・仕事で肩をよく使う人には手術を行います。

何故手術をするのか?

完全脱臼は手術が必要です。
手術は傷んだ靱帯・筋肉を修復し脱臼した関節を整復するのが目的。
手術の方法は色々あり、各医療機関の得意な方法で手術をしています。
各医療機関にて詳しい説明を受けて下さい。

手術後のリハビリ

復帰してから支障がないよう肩周辺のインナーマッスルを鍛える訓練をします。
「理学療法士」と相談しながらトレーニングを組み、根気よく続けて下さい。理学療法士さんは専門的な知識を有しているリハビリのプロ。

五郎丸選手も早期に回復させる為、根気強くリハビリしていると公式ブログに書かれています。リハビリは辛いですが辛さを乗り越える精神が最も大事になります。

はい、ここで疑問に思いませんか?

リハビリは通常固定して腫れが引いてきたらの2週間後~になりますが、プロや現役選手はそれでは間に合いません。遅れを取り戻す為に手術後3日後くらいからリハビリを始めます!

肩関節に負担が来ないように、他の部位の筋トレは普通ですね。それに加えもう二度と肩関節が脱臼しないように大胸筋・三角筋・上腕二頭筋を徹底的に鍛えます。

徹底的とは、文字通り早朝~夜まで行うでしょう。
以前日本代表のエディーHC特別練習メニューが話題になってましたが、世界で一番過酷な練習してます。

多分勝手な予想ですが五郎丸選手はシゴキにシゴカレテいます。尋常じゃない鍛え方をしているでしょう。そっちの方が肩周りに筋肉の鎧を纏い、脱臼しない強靭な肩関節に仕上げると思います。

ラグビーで多い脱臼は『肩関節前方脱臼』

相手に衝突した際又は転倒の際手をついた際起こります。
コンタクトスポーツの相撲、アメフトなども起き易いです。プロレスでは高位からの落下による脱臼は更に重度と言えます。
高齢者で多いのは、転倒した際手を衝き身体の重みが変に捻じれ、肩が外れる事があります。

肩関節脱臼の種類

前方脱臼・後方脱臼・下方脱臼とありますが、ほとんどは前方脱臼です(95%)

肩関節は、肩甲骨の関節窩(凹みの受け皿に関節唇)に上腕骨頭がぴったりと嵌まり色んな靭帯や、筋肉で支えられています。それらが直接衝突され肩がバコッと外れます。

ラグビーではタックルをかます際、反対から走ってくる選手を両手で覆います。この瞬間相手のスピード×体重が乗っかりますので相当なGがかかり肩が「もっていかれます」。

プロだと体重100㎏×20㎞/h=2Tが一瞬でかかる為相当な筋力が無ければ怪我の嵐です。ですからプロの方々は筋肉隆々なんですね。

見た目でも完全脱臼ならすぐ解ります。
誰もが「何か肩の形変じゃね?」と疑う程、腕がだら~んとするタイプ。
外れたのか判らない程、すぐ戻るタイプ亜脱臼もあります。

前方脱臼なら、骨頭が前に移動し腕が垂れ下がる感じで、患側の反対側の手(健側)の手で、脱臼した手を支えています。

肩関節脱臼の特徴

①肩の激しい痛み(圧痛、介達痛、運動痛など)

②骨頭の位置異常(左右見比べると一目瞭然)

③腫脹及び血腫(骨折よりは少ない事が多い)

④機能障害(自らは動かせません)

⑤弾発性固定(他動的には動くが、力を入れるとすぐ戻る)

他には合併症として、血管や神経を損傷する場合有り、関節唇や、軟部組織の損傷、骨折等もあげられます。

肩関節脱臼の治療方法

まず外れた骨頭を戻す事ですが軟部組織を痛め易いため

A.脱力させて

⇒肩・腕の緊張が抜けた瞬間に骨頭をはめ込みます。
少しでも力が入ると、元に戻りません。

B.うつぶせで

⇒両手に重りを持たせて、だらりとさせる
⇒しばらくして勝手に入る方法もあります。

ガチガチに固定するよりも、やや緩めて固定をする

固定は状況によりますが、テーピング又は包帯固定します。
3日後位からサポーターなどを勧めて、肘から肩が覆い隠せる大きな物をします。

癖にならない様に、筋トレ第一

外れた拍子に痛め、弱った靭帯・筋肉は「伸びている状態」です。
インナーマッスルを鍛え筋肉で収縮させ固定力を上げてもらい、二度と外れない様に強靭な肩周りを作ります。ですが1回外すと、小さな空間が出現しクセになる恐れありますので、きっちりインナーマッスルを鍛えて、安定を図ります。

元大横綱千代の富士

脱臼クセに悩んでいた一人です。
本来なら腱板(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)のインナーマッスルを鍛えるのですが、千代の富士は、三角筋のアウターマッスルを鍛え、筋骨隆々にしてました。この影の努力があり昭和の絶対横綱として君臨してたのです。相撲は脱臼は当たり前の世界なので、鍛え方も半端ないんでしょうね。

肩鎖関節脱臼・肩関節脱臼について分からないことや、疑問に思ったことがあればお気軽にメッセ―ジ・お電話ご相談下さい。