中高年の方の多くは、膝に何らかの不安をお持ちでいるかと思います。すでに痛みが発生している方もそうですが、普段痛くないのに、階段などの段差の時だけ痛くなったりします。今回は中高年の膝の痛みのメカニズムと予防についてお話しします。

膝が痛いときの、自宅で出来る簡単ケア

筋力低下が原因で痛みが発生している場合は、筋力をある程度太くする必要があります。膝関節が痛くて歩けなかったり、膝の曲げ伸ばしで関節が痛い方は下記の体操が効果的です。
※足を捻って転倒して痛めたり、どこかにぶつけて痛めたりした場合はこの限りではありません。

SLR運動(膝伸ばし運動)

 

仰向けに寝た状態で膝を立てます。
片足の膝を伸ばして真っすぐにして、床からこぶし一つ分上げたまま5秒(できれば10秒)キープ。
反対も同様に10~20セット行います。

太ももの内側の筋肉のトレーニング

 

仰向けで寝た状態で膝を立てます。
内ももの間にボールを挟み両サイドから押しつぶし5秒(できれば10秒)キープ
これを10~20回セット行います。

太ももの外側の筋肉のトレーニング

 

膝の痛い足を上にして、横向きになります(できれば交互に両方やって下さい)
膝を伸ばした状態(始めは多少曲がっても良いです)でゆっくり上に10cm ほど上げます。
その状態で5秒(できれば10秒)キープ。
これを10~20セット行います。

どの体操も実際やって見ると、非常に簡単なのでうってつけです。最初は軽めのスタートで『5秒間』頑張ってみましょう。回数も『10回』までで大丈夫です。

運動不足は疲れやすい?

小腹が減りやすくなります。糖質と塩分が非常に多いお菓子を食べると、わずかな量で満腹を感じますので、エネルギーを満たされず、栄養も偏り益々やせ細ります。運動しながらバランスの良い食事をすることは、疲れにくい体になり、筋力低下や内臓疾患を予防できて健康を保つことが出来ます。

 

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)とは?

中高年の方の多くは加齢とともに膝の軟骨が固くなり、膝を支える周囲の筋肉も弱くなることで痛みが出てきます。40歳を過ぎたあたりから

①座り仕事が増えて運動量が減る
②筋力の低下と疲労
③加齢による、劣化した軟骨などが耐えられなくなる
④女性は閉経による影響

運動不足を普段から補えていると、その痛みを軽減したり、起こらないようにする事も可能なのです。

膝関節内の軟骨のすり減りによる炎症が原因

膝の曲げ伸ばしがしにくく進行するとO脚変形になっていきます。

〈初期症状〉
立ち上がりや座るときなどの体位変換の時、歩き始めや長時間歩行(少し休むと痛みが無くなる)で痛くなる。

〈中期症状〉
歩いた時点で膝が痛く、正座や階段昇降も困難になる。

〈末期症状〉
変形が目立つようになり、膝の曲げ伸ばしがしにくくなる。歩くのも困難になる。

膝の曲げ伸ばし不足は膝の中に痛みが出ます。

関節の曲げ伸ばしが不足すると、半月板や軟骨の水分が保持できず、衝撃に弱くなり痛みが発生します。早めに画像診断を受けて適切な治療が必要になります。

O脚になりやすい?!

足の筋力低下は、立歩きの不安定さを招くので、自然と足を開く事で安定性を補います。男性はガニ股傾向ですね。女性の場合は骨盤の影響から、下肢の骨格が広がりやすく、よりつま先が開きます。
これにより、脚の荷重が筋力の弱っている内側にかかり、O脚になりやすく、膝の内側は元より扁平足や外反母趾になっていきます。

 

日常の隙間時間で予防できます

日常でできる簡単な予防法はウォーキングです。

姿勢を正して足を擦らないように、ゆっくりまっすぐ歩きます。
初めはほんの少しでも、歩き慣れた頃には痛みが消えていることがほとんどです。

信号を待っている時などは、片足を交互に10秒程度、軽く上げてみるのにも挑戦してみて下さい

膝の屈伸運動も効果的です

膝の屈伸運動が無くなったからこそ痛みが出ますので、膝の曲げ伸ばしをすると痛みは消えていきます。
例えば床にあるものを拾う時は、必ずしゃがんで取るように心がけましょう 。
体力的に余裕がある方は、バレエのプリエをやると効果が高いです。

  1. 壁や椅子の背もたれなどに手を添えてふらつきを予防してください(正面でも側面でも構いません)
  2. 両足は肩幅くらいに広げてつま先を45°に開きます(出来る人は左右180°にしてください)
  3. 上体を起こしたままゆっくりと膝を曲げていき、出来るだけしゃがみます(ムリに最後までしゃがまなくて大丈夫です)
  4. ゆっくりと立ち上がります。

初めは不慣れな部分もありますので、無理のない回数で行なってください。慣れてきましたら少しずつ深くしゃがんでみたり、回数を増やしてみましょう。
最初の目標は1日に10回できる様に目指しましょう。

1日のほんの少しの時間を利用して少しずつ筋力を上げていくと、自然と痛みの予防に繋がります(腰痛予防にもなります)

 

膝関節が痛いときの整骨院での治療法

①手技療法
患部の痛みに対して、支えている筋肉は力が入り固くなっていることが多いです。支えきれなくなることで、より患部に痛みが出てきます。固さを取り除くことで、その筋肉に余裕が生まれ、痛みが和らぎます。

②冷罨法(アイシング)
急性期の痛みや炎症による痛みに対いて行います。主に関節内の痛みに対して用いることが多いです。

③温罨法(ホットパック等)
炎症期でない筋肉や腱の痛みに対し、血液循環を良くして疲労や収縮などで固くなった組織を緩ませるために用います。

④電気療法
患部周辺や動かしたい筋肉に装着し、適度な電気刺激で組織の血液循環を測ったり、弱った筋肉を動かして強化していきます。

⑤超音波療法
1分間に数万回の微細な振動を発生させ組織の再生を促します。骨折の治療にも欠かせない機械ですが、炎症を抑え痛みを沈めたり、筋肉や腱など軟かい組織の再構成を促し修復することも出来ます。

⑥装具療法
膝サポーターなどで動きを制限することで、患部に刺激を与えにくくして痛みを減らし、治療効果を上げるのに役立ちます。

まずは痛みを抑えてから

多くの方は膝の痛みが、中程度以上になってから来られる方が多いです。中には、かばった歩き方をされて、反対の足まで痛くなる方もいらっしゃいます。
歩いた時に、痛みがどこで、どのように出ているかを確認します。膝周りの自家筋力が落ちている方は、電気療法や手技療法で負担の掛かっている筋肉を緩めて、支えやすくなるようにします。
関節内に炎症性の痛みがあれば、アイシングの後、超音波治療器で炎症症状を抑えます。
歩き方の改善が必要であれば、サポーターも検討の上、歩き方のアドバイスを致します。

 

この痛みは変形性膝関節症?似ている症状

膝の痛みの初期症状は大腿四頭筋(だいたいしとうきん)筋力が弱くなるにつれて現れます。

変形性膝関節症に至る前の段階や、偽痛風による石灰沈着、鵞足炎・・・膝の内側の荷重負担が増えて起きる初期症状は、足の筋力低下で起こります。階段だけでなく、平地を歩いても膝が痛い方は早めの治療をお勧めします。

関節リウマチ

両手足の小さな関節に始まり、朝に強張りを感じることが典型的な例になります。
両側・対照的に起こる関節炎ですが、進行すると膝や肘など大きな関節にも広がります。20代~50代に多い自己免疫疾患と呼ばれており、関節炎以外の症状も多彩で、微熱や倦怠感など全身症状を伴う事もあります。

〈軽傷型〉
手や足の関節に病変がとどまります。

〈重症型〉
全身の関節に病変が広がります。

大腿内顆(膝関節内顆)骨壊死(だいたいないかこつえし)

中年以降の女性に多くみられる病気で、夜間に痛みが強く出るのが特徴です。
膝関節の内側にある骨組織の一部が壊死することで起こります。(別名:特発性膝関節骨壊死)

〈発症期〉
消炎鎮痛剤と併用して膝サポーターやインソールなどの装具や、杖を使った膝に負担を掛けない免荷歩行などを行います。

〈吸収期〉
軽度の壊死になりますが、自然に治ることもあります。

〈陥凹期〉
関節面の凹みが強く、内反変形がおこります。痛みが酷くどうにもならない時は関節面の負担を減らす手術で、関節の高さを揃えます。

〈変性期〉
最も変形の進んでしまった膝関節症になりますと『人工膝関節』の手術になります。

偽痛風

あまり耳なじみの無い病名ですが、痛風に良く似た症状で大きな関節に痛みが出やすいと言われています。

痛風=尿酸が原因で起こります。
偽痛風=石灰(カルシウム)が原因で起こります。

高齢者の方に多いのが、カルシウムの過剰摂取よりも、運動量低下と外出不足によるカルシウムの骨吸収率の低下です。
カルシウムが体内に多く残ると腎臓経由で排泄されます。それでも残ってしまうと、石灰として関節に溜まる性質があります。体内にカルシウムが残りやすくなる原因に、お茶のカフェインとお煎餅の塩分もカルシウムの吸収を妨げます。

 

 治すルーティーンを作ってみましょう

これまでの痛みの出る生活は『歩かない』『動かない』日常生活なので『痛みが出る』というルーティーンでしたが、今度は『使って』『疲れて』『治療する』ルーティーンに切り替えましょう。
もちろん始めの内は、急に筋肉を使いますので『筋肉痛』などが出る事がありますが、筋力が上がるにつれて痛みは無くなっていきます。整骨院では運動の仕方や、生活する上で必要な事も併せて、アドバイスさせて頂きます。

ここに書いていないことで「こんな予防法はやって大丈夫かしら?」などお気軽にお尋ねください。