祖父のお見舞いで、川崎幸病院へ行って参りました。
症状が心臓の大動脈瘤と言われ、破裂すると命が危ないとのことで、実家の八戸から川崎に来て診察を受けにきていました。
ここの川崎幸病院では、大動脈の専門医である権威を持っている方が日本で一番有名です。病院は綺麗で、スタッフの方も物凄く丁寧親切です。
86歳の祖父は元気で、未だに田んぼ仕事をしていますが、大動脈瘤となるといつ破裂してもおかしくないとのことです。しかし、手術に耐えれる体力が高齢のため難しいと仰っていました。
なるべく心臓に負担が来ないように過ごしてもらう形になり、どうにか手伝うことがないか考えておりました。心臓や臓器となると、これ程自分が無力さを感じることがありません。どうかお祖父ちゃん、無理をしないでくれと祈るばかりです。
現在は食生活が豊かで、動脈硬化の方が増えているそうです。食生活の見直しや、定期的に健康診断を受診することを薦めます。
危険な大動脈の動脈硬化
中高年の方なら、大動脈瘤(りゅう)や大動脈解離(かいり)といった病名を、一度は聞いたことがあるでしょう。家族や知人に、大動脈瘤が破裂して緊急手術を受けた方がいるかもしれません。
大動脈ってどこにあるの?
大動脈は、心臓から出て胸部、腹部にいたる、からだの中心を走る最も太い血管のことです。太さは胸部で直径約3cm、腹部でも約2cmもあります。
その太い血管で動脈硬化が進むと、血管内壁の弾力性が低下し、さまざまな異常が起こりやすくなります。もろくなった血管内壁に高血圧などの要因が加わり、血管がコブのようにふくらんだ状態になるのが大動脈瘤。
血管内壁の一部に亀裂が入り、剥離を起こした状態が大動脈解離です。
どちらも放置すると、あるとき血管が破裂して大出血を起こす、命にかかわる重大な病気です。
放置すれば死亡率が上がる
例えば大動脈瘤が破裂した場合は、緊急手術を受けても死亡率は30~50%
大動脈解離の場合、2週間放置していると死亡率は75%にも達します。
それほど危険な病気なのですが、大出血を起こすまでは目立つ自覚症状がないため、なかなか気がつきません。
早期発見のためにも、病気について知っておき、予防を心がけることが大切です。特に高圧血は、動脈硬化の原因になるだけでなく、血管がふくらんだり、亀裂が入る要因ともなるので、十分な注意が必要です。
厚生労働省の『人口動態統計』などによれば、大動脈瘤と大動脈解離による死亡者はこの10年間で約2倍に増えています。
大動脈瘤とは、どんな病気?
大動脈瘤は、できる場所によって胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤に分けられます。
血管の直径が通常の直径2~3cmが1.5倍になると大動脈瘤と診断されます。2倍程度7~8cmになると手術が必要です。
発症年齢は70歳代がピークで、痛みなどの前兆はありません。
大動脈瘤が破裂すると?
胸部の場合には胸や背中に強い痛みを感じ、呼吸困難に陥ることもあります。腹部の場合には、お腹や腰の付近に強烈な痛みを感じます。
どちらにしても激痛、チアノーゼ症状に陥り知覚異常になります。すぐに救急車を呼びましょう。
胸部大動脈瘤の場合
①声帯の神経を圧迫するとしわがれ声になる
②気管を圧迫すると呼吸が苦しくなる
③食道を圧迫すると嚥下障害(飲み込みにくい)を起こすなど
腹部大動脈瘤の場合
お腹のあたりに触れるとドクンドクンという拍動を感じる。
大動脈瘤の発症年齢70歳代が断然多く、続いて80歳代、60歳代となっています。
男性が女性の3倍程度になります。
大動脈解離とは?
大動脈解離は、血管のいちばん内側にある内膜に亀裂が入り、そこから血液が一気に流れ込み、次の中膜が裂けて剥離を起こす病気です。
中膜の剥離が進んで外膜まで破れると、大出血を起こすこともあります。
大動脈解離の場合、引き裂かれるような痛みとか、バットで殴られたような激痛を感じます。
痛みは胸から背中や肩、そして腹部というように移動します。痛みを我慢すると、どんどん解離が大きくなり、死亡率も高くなります。発症年齢は70歳代がピークで、高血圧の方は解離を起こしやすい。
先日祖父が大動脈瘤の手術の中止に大きく関わることになった原因が、肺癌です。もし仮に手術をした所で、
①手術中の低体温手術による体力低下
②成功したとしても、2週間車いす入院からの筋力低下
③病室等の空間での、ベッド上の一日の過ごし方(テレビ)で長期臥床による体力の減少・認知症の悪化
手術後に一番恐れているのが、肺癌が飛ぶということです。
飛ぶ=転移するということですが、86歳の高年齢から体力が落ちると一気に転移が加速するそうです。
例え肺癌があったとしても、高齢だから転移はあまりしないと思っていました。逆に若年層は細胞が活性化しているため早いものだと思っていました。
しかし現実は違い、開腹した途端にリンパ・腸内・肝臓へと転移し全身転移型になると。
肺癌でのステージⅣ
末期症状なので抗がん剤治療か放射線治療しかないと。
二つの治療はどちらもハイリスクで、どちらを選んでも2週間は寝たきり状態が続き、その後の要介護支援が必要で世話を付きっきりでやらなければなりません。大動脈瘤を取るか、取らずにその後進行する肺癌の治療をするか。
確かに祖父は私が産まれた瞬間からヘビースモーカーでした。
ただ、私の中では祖父は田んぼ作業を元気にこなす田舎の優しいお祖父ちゃんです。そんな元気な祖父が、田舎から川崎の大病院に遠路遥々手術しに来たと思ったら手術すると予後不良になると。
QOLを無視するか?尊重するか?
父も叔母も叔父も親戚中が駆けつけてくれました。叔母はラスベガスからです。こうして親の兄弟が揃うのも何年かぶりです。父は迷ったみたいですが、手術をしないで一緒に田舎に帰ろうと決め、次の日に山下公園のクルージングと元町中華街を祖父との人生最後の観光とし思い出にしました。
川崎幸病院の先生は、手術する2日前に本人と家族に説明してくれました。手術をしても良いが、その後のQOLが下がると。ギリギリになってからの手術中止の決断を申し出てくれたお医者様には頭が下がります。
余生はどのくらいかわかりませんが、もし手術をして寝たきりになっていたらと思うと、このままが良いのかも知れません。
大動脈瘤の破裂と肺癌進行の脅威は未だにありますが、祖父のQOLを尊重すれば『何もしない』が正しいのか、『僅かな希望にかけて手術をするか』どちらなのかは難しいですが松倉家は『何もしない』に賭けました。
余命という響きは嫌いですが、余生という響きはまだ明るい感覚があります。
限られてはいますが、好きな田んぼ作業をして、好きな物を食べて、好きに幕を閉じる。どうか一日でも長く、お祖父ちゃん人生を楽しんでください。