何年も変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)で悩まれた方が、南共済病院にてお膝の手術をされました。どうやって通常の様に歩いていかれたのかをご説明します。手術後まもなく、まだ医療ラップで傷口を覆っていましたが、快く写真掲載を承諾頂きました。

『同じ病室に、同じ手術した人が3人もいてねー、私が一番早く退院しちゃったのよ~』

明るく話すKさんのお膝は人工関節が入っている為、お膝のど真ん中にザックリと切られた跡が。。。右膝の2倍は赤く膨れ上がり、今にも破裂しそうな程、見た目はとても痛々しいです。

何故Kさんは手術後3~4週間は入院期間が必要という状況から、たった14日で退院できたんでしょうか?普段は○○をしていたから、他の人よりも早く退院できたと仰ってました。

変形性膝関節症になるのは人類「しょうがない」部分もありますが①症状を緩和する方法、②痛みを和らげる方法、③手術を回避する方法、④手術の方法、⑤リハビリ方法があります。Kさんはその中でも④の人工関節を使用し、見事に元のお膝以上に返り咲きました。同じ症状のかた、関心することもあるので、是非参考してみてください。

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)とは?

膝の関節が変形してしまう病気です。長い年月をかけて軟骨がすり減ったり、骨がすり減ったり変形したりします。
軟骨や骨が変形するので、関節の動きが悪くなります。
ひどくなると膝が曲がらなくなったり、伸びきらなくなったりします。
若いうちは筋力があって、膝の関節にかかる負担を減らすことが出来ますが、年を重ねていくと筋力が低下してきます。すると関節に大きな負担がかかり、関節に痛みや変形をきたします。

いわゆるO脚、がに股、ガニ股と言います。

真っすぐ立っていても、お膝全体が丸く湾曲している状態です。

 

注射で我慢するか、手術に踏み切った方が良い?のか手術の目安

日常生活に支障が出るようでしたら、まずは、お近くの整骨院の先生に相談してください。

膝が曲がらなくて靴下を履くのが大変とか、膝が痛くて歩けないとか。。。。

レントゲンを撮って、関節の隙間がなくなったから手術、ではなく、出ている症状を考えて専門医に相談するとよいでしょう。

状態や年齢、活動レベルによって手術の方法がいくつかあります。

関節鏡(かんせつきょう)手術

関節鏡(関節の中で使う胃カメラみたいな機械)を使って、軟骨のささくれを取ったり、関節を包んでいる袋の内側の余計なヒダを取ったり、軟骨や骨のかけらを掃除します。

骨切術(こつきりじゅつ)

すねの骨を一部切って、切ったところにくさび状の人工の骨を入れて、膝の角度を変えて、体重が関節の中で均等にかかるようにします。例えて言うなら、O脚を修正するようなイメージです。

人工関節(じんこうかんせつ)

膝の関節を人工関節に入れ替えます。関節全部入れ換える場合もあれば、一部入れ換える方法もあります。骨の代わりに金属のチタン、軟骨の代わりに樹脂が使われています。

 

手術のメリット、デメリット

手術のメリットとしては、歩行時の関節の痛みが軽減し、動きがスムーズになります。手術全般に言えるデメリットは、感染症の恐れです。

関節鏡手術でのメリット

手術跡が小さく済むので、回復が比較的早いです。ただし、痛みや動きの悪さの原因全てが取り除かれるわけではないので、期待した効果が無い事もあります。変形が進んでしまった方にはあまりお勧めされません。

骨切り術のメリット

変形が進んでしまったときに、人工関節に取り換えることが出来ます。年齢が比較的若く、人工関節の寿命よりも余命が長い方は、人工関節を取り換える必要が出てきます。人工関節を取り換えるのは結構大変な手術になりますので、若い方は骨切術を勧められるでしょう。

骨切り術のデメリット

骨がくっつくまで時間がかかり、入院期間が長くなります。筋力が足りずに、関節に負担がかかったままだと変形が進むこともあります。

 

手術したからと言って、安心してはいけない

人工関節には寿命がありますので、いつかは交換が必要になります。寿命は一般的に15~20年と言われています。人工関節の交換は難しいので、なるべく交換をしなくて済むようにします。若い人の場合は関節鏡できれいにしたり、骨切り術などで対応することが多いです。人工関節の寿命を考慮して、交換せずに済みそうな年齢までがんばります。

手術をしてもしなくても、リハビリを頑張る必要があります。

手術の前から筋トレをしておくと、術後が楽になります。膝の周りにメスを入れるのと、術後の安静期間で、どうしても筋力低下を起こします。前もって筋力を強化して、術後の筋力低下を少しでも食い止めます。また、手術をしない場合も筋力を強化して、膝関節にかかる負担を減らす必要があります。

 

当院での患者様から観察した手術後経過

70代の女性です。左膝関節に骨切術の手術を若い頃に受けています。歩いている時にカクッと膝が外れるように感じ、整形外科を受診されました。お医者さんと相談の結果、人工関節置の手術を受けることに決めました。14日で病院を退院し、和ごころ整骨院に来院されました。

手術から2週間後

左膝が全体的に腫れていて、若干赤みがかっています。

縫った跡はきれいにくっついています。傷はまだ赤さが残っていて、腫れて盛り上がりつつ、突っ張っている様に見えます。

 

手術から4週間後

立ち上がると、縫い跡に対して横向きにしわが寄ってしまいます。皮ふと皮ふの下の組織がゆ着を起こしていて、しわが寄ってしまうと思われます。手術を受けていない右側と比べると、しわの寄り方が違います。

 

手術から6週間後

だいぶ腫れが引いてきました。皮ふの色も左右同じくらいの色合いになってきました。

縫い跡の腫れや盛り上がりが少なくなってきました。色は赤みが減り、赤茶色っぽくなってきました。膝周囲に若干腫れが残っているため、左膝が少しテカって見えます。

 

手術から7週間後

縫い跡周りのしわの寄り方が右側の膝と同じようになってきました。縫い跡の上の端が引きつれてしわになっています。まだ少しゆ着が残っているようです。

 

手術から10週間後

腫れがさらに引いてきました。盛り上がっていた縫い跡がへこんできました。

色も赤みが無くなり、焦げ茶色に変わってきました。膝の皮ふのテカリがなくなりました。

 

手術をした後は関節は曲がるのか?

手術の後から、膝は曲がります。ただ、痛いからと言って放っておくと、どんどん曲がらなくなっていきます。

ですから、手術の後早い段階から膝を曲げなばしするリハビリテーションが始まります。ベットで横になっている間、膝を曲げ伸ばしする機械を使ってのリハビリです。

 

手術後の傷跡・腫れ・痛みはどうなるのか?

傷跡は残ります

放置していると、皮ふと皮ふの下の組織がゆ着して膝の動きを邪魔する事があります。

傷口がしっかりとくっついたら、傷口をマッサージしてゆ着を剥がしていきます。傷跡は瘢痕組織(はんこんそしき)と言ってやけどの跡と同じような組織になることがあります。傷が浅い場合は元どおり、皮ふとして再生されますが、手術の縫合が緩すぎたり、きつ過ぎたりしても、元の組織ではなく瘢痕組織に変わってしまいます。

筋肉や靭帯が切れた場合も瘢痕組織に変わってしうことがあります。瘢痕組織はだんだん引きつれてくるので、しっかりマッサージして引きつれを防ぎましょう。引きつれがひどくなると、膝が曲がりにくくなることがあります。

 

手術後は腫れます

枕などで少し下肢を高くしながらアイシングをして、腫れを抑えます。

腫れがひどいと、血液が滞ってしまいます。血液によって酸素が肺から各所に運ばれますが、血液が滞りますと、そこは酸素が不足してしまい酸欠になります。傷の治りが遅くなったり、痛みがなかなか引かなかったりします。傷の治りを促すため、余計な腫れを出さないように、足を高くしたり、アイシングが有効です。また、アイシングは腫れを抑えるだけでなく、アイシングの後に、傷の治りを促す物質が出てくるそうです。

 

余計痛くなる?

人工関節には神経が通っていませんので、痛みを感じません。

ただ、周囲の組織には神経が通っていますので、関節の周りは痛みが出ます。傷口は当然痛みます。傷が治るにしたがって痛みが減ってきます。退院する頃には痛みは引いているはずです。

退院後に膝が痛い、腫れてきた、熱くなってきたなどの症状がある場合は主治医に診てもらってください。細菌感染の場合、前述の症状が出ることがあります。初期の感染症であれば抗生剤で済みますが、感染がひどくなると、再手術が必要になってしまいます。

 

術後の病院内リハビリはどんなことをするのか?

リハビリの内容は各病院で決められています。
3日間くらいは安静~出血した血液を抜く管が取れたらリハビリ開始。

機械で膝の曲げ伸ばし訓練、太ももの前側に力を入れる体操、膝を伸ばしたまま脚を持ち上げる体操などから始めていきます。
回復状況にあわせて負荷を上げていきます。手術・入院のため筋力が低下しているので、筋力増強訓練が重要になります。

関節を動かさないでいると、どんどん動く範囲が狭まってくるので、あわせて関節可動域訓練も重要です。
筋力と関節の動きがしっかり確保出来たら、歩行訓練につなげていきます。
立ち上がりから始めて、平行棒内での歩行訓練、歩行器を使った歩行訓練、杖を使った歩行訓練と難易度を上げていきます。
杖をついて歩けるようになれば退院ではないでしょうか。

 

退院したら自宅でのリハビリのスタート

病院では時間が来ればリハビリ室に連れていかれ、リハビリが始まりますが、退院したらそうはいきません。

ご自分の意思でリハビリを行います。
習慣になるまでは大変です。
習慣になるまでが頑張りどころです。

①湯船の中で膝を曲げ伸ばししたり
②椅子に座った状態で、片方ずつ膝を伸ばしたり
③散歩したり

できる範囲でかまいません。無理せず、継続するのがポイントです。

 

リハビリでチェックする事、注意点

痛みが強くなったり、縫ったところが腫れてきたり、熱を持ったりしたら注意信号。主治医に相談して下さいね。

手術後4週間で安定して歩け、痛み無く、手術前と同じくらい膝が曲がるようになるのが目標。

個人差がありますので、無理はなさらないように。

前述の注意信号を見逃さない様にしましょう。